四季彩々 小ネタ詰め
※すでにデキてる仲、という設定が前提です。 *********************************** ● 熱帯夜 暑すぎて、眠れない。 「くっつくな!!離れて寝ろよ!!!」 寝苦しさに何度か寝返りを打つうち、擦り寄ってきた三味線屋を引き剥がそうとする秀に、 「こーいうときは独り寝したってどのみち暑いんだからよ」 と背面抱っこ。 「ああああアチィーーーー!!!!」 勇次の密着する体が熱すぎて、もったりした外気がむしろ涼しく感じるほど。 そのうち意思を持った手が肌をまさぐりだし、抵抗する気力もなく目を閉じる秀。最後は汗だくになって寝落ちするふたりです。 翌朝仲良く?一番風呂に入りに行きます。 「おい…、汗臭ぇから側に寄るな(お互い)」 「なぁに水臭ぇ。おめぇの汗の味はオレがよーく知ってるさ。さ、背中流してやるからW水入らずWといこうじゃねぇかd(^_^o)」 「……(-_-メ)」 結局朝から流しっこしました。 ● 秋風 夏の賑わいが嘘のように、見世物小屋や軒並ぶ茶店も人通りが減って寂れてくる秋の両国界隈。 店先に積んである床几や酒樽を避け、鰊の蒲焼きや焼きとうきびの匂いもしなくなった道を歩きながら、 「祭りの後ってな寂しいもんだな……。急に風まで冷たくなった気がするぜ」 呟く隣の男を見て、勇次が言う。 「十三夜の祭りがまだあるさ。おめぇにススキのみみずくを買ってやるよ、秀」 「ガキ扱いすんな」 ソッポを向く錺師に、更に付け加える。 「秋風が身にしみるなら温石代わりに焼き栗もな。どうだ?」 「そんなジジイじゃねえよ!」 「ああ言えばこう言う。口のへらねぇお姫(ひぃ)さまだ」 「誰がお姫だっ」 寂しがり屋は強がるときほどよく喋る。オレはまだ、おめぇの傍にいるけどな。 口に出せばまた秀がムキになりそうな事を考えて、ただ笑いながら秋空の下連れだって行くふたりの、新しい季節。 ● 柚子風呂 江戸郊外での依頼のために、三味線屋と二人でとある温泉宿場町に投宿し、 江戸に向けて来るはずの悪党一味を待ち受けることになった錺師。 加代から届いた便りによれば、あちらさんに何らかの内輪揉めがあったらしく、宿場到着まであと三日ほどはかかるとのこと。 「時間の無駄だ」 苛立ち、自分たちのほうからそいつらの元に行こうと逸る秀を制する勇次。 「いいじゃねぇか。今さらどこに逃げられるわけでもねぇ。この際おめぇもゆっくり休んでたらどうだい?」 呑気すぎる勇次に苛立ちつつも、焦ったところで逆に取り逃がしてしまっては元も子もないので、大人しく我慢する秀。 とはいえ特にすることもなく、温泉好きの勇次と共に長湯に浸かることになります。 今夜の露天風呂にはたくさんの柚子が浮かべてありました。 「そうか……。もう冬至なんだ」 冷えた肌を慌てて湯に沈めた秀が、珍しく感慨深げに独り言を言うと、 裸の肩にぶつかってきた柚子の一つを手にして鼻先に近づけました。 「いい香りだな」 柚子湯が気に入ったとみえ、さっきまでの不機嫌さも和らいでいる濡れた顔を、横目で眺めて優しく微笑む勇次。 が、二人きりの露天風呂に別の客が入り始めると、いつもの凄艶で恐ろし気な目つきに逆戻り。 「あの太った目の細ぇ男、昨日からおめぇを見る目つきがどうも物欲しげで気に入らねぇ……」 「(小声)ばか!誰でもてめぇと同類にすんなっ。こんなとこでガンたれてんじゃねぇよ(# ゚Д゚)!」 気分はすっかり恋人との慰安旅行。緊張感のまるでない勇次を叱責する秀ですが、相棒を組まされてここに潜伏している以上、 なんとか仕事を完遂させねば江戸で待ち構えている八丁堀たちに示しがつきません。 「もういいっ。先に上がるぜ俺は!」 女遊びはやめない己の行動は棚上げして意外にヤキモチ焼きの勇次に、照れくささ反面、 日ごろの自分のモヤモヤの仕返しをしてやった気がして、そこは内心まんざらでもない秀です。 着替えを済ませて湯殿を出ると、いつの間に上がって来たのか、勇次も後から出てきました。 「ハァ〜、いい湯だった。思わぬ命の洗濯だな」 「何しに来たのか忘れんなよ」 「分かってるよお」 狭い廊下で行き違う宿泊客を避けてふたりが壁際に寄ると、背後の勇次が鼻先を秀のまだ湯気のたつ襟足に埋めてくんくん。 「!なっ……」 「いい香りが染み込んでるな」 周りに気付かれなかったかとカッと顔に朱を上らせて押し返そうするけれど、 そんな勇次の体からもふわっと立つ艶めかしい柚子の移り香。 「今夜はよく眠れそうだ。なっ、秀」 「―――あ。あぁ……」 その夜はどうしたわけか、秀のほうから色男の布団に潜ってきたということです。 ● 外伝!?【秀さんの○○○奉公 一】 秀に金儲けのための妾奉公をさせたらどんなことになるかと考えたら、楽しくて止まらなくなりました。 腐りきってすみません……。 裏で手を組むのはもちろん、三味線屋の悪い色男。話を持ち掛けられ最初は、 「冗談じゃねぇ!!!」 と怒っていた秀を、 「まあそういうなって。いつまでも命削って仕事人するより、別の人助けだと考えりゃいいじゃねぇかよ」 と舌先三寸で丸め込み、二人結託して、女房を亡くしたお店(たな)の旦那さんやら隠居を篭絡してゆきます。 元々セフレの勇次に内心惚れてる秀。死んでも言うもんかと思いながらも、 (あの野郎・・・。俺になんかあってもいいのかよ!?いつまでも惚れてるなんて思うなよ……旦那は俺に首ったけなんだからな!) 旦那が来ないときには暇すぎて、結局簪造りの内職をして過ごしている秀。 時には間男みたいに忍んで来た勇次と、昼間っから隠れて睦み合ったりもするのですが、最近忙しいのかなかなか姿を見せません。 (たまには面くれぇ見せやがれってんだ・・・) 渋い赤紫の襦袢(おめぇの色気を引き立てる、と勇次が選んだ)姿で気怠く寝転がり、 暇つぶしに猫のノミとりをしていじけながら、やって来た旦那と気のないエッチをするビ〇チな秀はいかがでしょう。 ● 外伝!?【秀さんの○○○奉公 二】 お顔とカラダと声は最高だけど、愛想は悪いし口はもっと悪い。 性格もちょっと?ひねくれてる気難しがりや。そんな秀さんですが、旦那にはぞっこん気に入られています。 久しぶりに勇次が、夜にしか来られない旦那の留守中に妾宅をふらりと覗いてみると、 真っ昼間というのに色っぽく潤んだ目をした秀が、いかにも厭そうに出迎えました。 「……なんだよ。こんなときに来るんじゃねぇよ」 意味不明なことを口走りつつ、何となく顔を赤くし勇次と面と向かって話すのすら避けるような態度。 「おめぇの方こそなんでぇ。ちっとは淋しがってるかと思えばすかしてんな。旦那に可愛がられてるってとこ見せつける気か?」 傍らに片膝ついてにじり寄った勇次が、そっぽ向く秀の顎をむりに指先で振り向かせて、さすがに面白くない声で尋ねると、 「誰がだバカ。……旦那がゆうべスッポン喰おうって、魚屋を呼んだんだよ」 まだ淫気の抜けきれてないボソボソした声。 急に冷え込んだ昨晩、やって来た旦那が魚屋を呼び、活きたスッポンを台所で捌かせたそうで。 魚屋がスッポンの首を落として直ぐ器に受けた生き血を、『精が付く』てんで、まずは旦那と半分づつ分けて飲まされた秀さん。 捌いた身は鍋にしてふたりで美味しく頂いたのですが、 その後スッポンパワーで張り切った旦那の相手をさせられたことは言うまでもありません。。。 「ふーん。そりゃあさぞかしお盛んだったんだろうな」 内側から光るようなしっとりした肌の艶や血の色の濃く通った唇を睨みつつ皮肉を言えば、 秀もキッと、そのくせやるせない目つきで睨み返して言いました。 「なワケあるか!旦那のトシ考えろ」 いかんせん、旦那は秀よりも倍近い五十路後半。旦那的に可愛い妾のために精力を増して頑張ったつもりでしたが、 若い秀にはすっぽんのエキスは過剰すぎて――― 「そいつは悪かった。おめぇの不満も無理はねぇ」 自分だけ満足して帰っていった旦那を尻目に、消化不良のままモヤモヤをひとり持て余していたところに、 内心でずっと待ってた男の登場。意地を張りつつも、じれったい体はもう秋波を全身で送ってしまっているのでした。 一方、秘かな嫉妬からすばやく立ち直った勇次、長い指で秀の喉元をくすぐりながら尋ねます。 「年寄りをあてがったのはこのオレだからな。ちゃんと責任とっておめぇの面倒は見てやらなくちゃな?」 「そっ……そーだ。おめぇの所為だ。早く何とかしろっっ」 「まかせろ、秀」 「……スッポンは一度食いついたら放さねぇというがホントだなぁ」 げしっっっ!! 小説部屋topに戻る
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