(※レ○プシーンです。痛い内容です。 苦手な方は飛ばして次にお進みください。)






秀、お仕置きされる 2






 濃密な闇が重く沈み、辺り一帯に漂う澱んだ空気の上に重なり合う。
 狭い長屋の板間では、若い男ふたりの吐き出す乱れた呼気と衣擦れの音が、 夏のもったりとした夜気をさらに重く掻き回し、いつ果てるともなく続いていた。
 燭台の油はとっくに燃え尽きてしまった。 素っ裸にひんむいた秀の後腔にその油をすくいとって塗り込めた勇次は、 そこが十分に解れてもいないうちに、後ろから無理やり秀を貫いた。
 前戯などあるはずもない。ただ肉体を征服するための苦痛のみを与え、 屈辱と敗北感にまみれさせるだけの行為・・・。 無惨に引き裂かれた後腔からは出血し、秀の内腿に細い血の筋をつけた。
 いっそ気を失ってしまいたかったが、勇次はたくみに秀が意識を手放す前に腰を引き、 ぎりぎりのところで休ませてはくれないのだった。
「・・・グッ―――うッうぅ・・・!」
 容赦ない抽送のたび、床に這いつくばった冷や汗の滲む上体がのたくる。
「食い縛るんじゃねぇ。歯を砕くぜ」
 秀の腰を両手で掴んでいた勇次が、脱がせた服を引き寄せて秀の口に押し込む。 縋るものを求めて足掻く冷え切った両手を背後から掴んで、硬い床に押しつけた。 裸の痩せた背中に覆い被さる着物の感触に、勇次がずっと着衣のまま自分を犯していることを知る。 勇次はどこまでも、秀をおとしめ嬲り尽くすつもりらしかった。
「ヒッ、・・・ウッ・・・ッ・・ゥッ」
 腰を後ろに突き出すような恰好を取らされている膝が、もう痛覚さえ通り越してわなないている。 何度か腿や腹のなかに勇次の精をぶちまけられ、牝犬かなにかになった気分だ。 獣の交尾と変わらぬあさましい交わりが、秀の自尊心を打ち砕きなにかを考える気力さえ奪ってゆく。
 それでも勇次が耳元に顔を寄せて耳朶を甘咬みし、うなじに唇を這わせはじめると、 嫌悪ともべつの感覚ともつかない刺激が背筋を奔り、秀の肌が粟だった。
「―――や、やめろ・・・!」
 前に回った勇次の広い掌が、引き締まった脇腹から胸へと濡れた肌を撫で回す。 探り当てた胸の小さな突起を女にするように指先で執拗に弄られ、 秀は両腕のあいだに落とし込んでいた頭をふるふると振った。
「やめっ・・・嫌だっ・・・」
「嫌なだけじゃないんだろ・・・秀?なにか感じるんじゃねぇのかい―――」
 意地悪く囁き、指の腹で転がされてすっかり硬くなったそこをきつく摘む。一点から広がる微妙な刺激に、 秀が息を呑んで身を捩らせた。
「は・・・はやくっ・・・ぉわ―――終われよ・・・っ」
 何度も勇次を受け入れた場所は、いまや腫れぼったく鈍い痛みしか感じなくなっていたが、 そのさらに奥のほうから、少しずつ重怠いような妙な疼きが引き出されてきたようで、 秀はその未知なる感覚の芽生えに怯えていた。
「急ぐなよ。今度はおめぇが気を遣るのを見てみたいね」
 するりと、長い指がはじめて秀の性器に触れた。
「!?っ触るな・・・!!」
 秀の全身を燃え立つような羞恥が襲った。それは尻を犯されている間、 苦痛とは裏腹に生理的な刺激をうけて、半勃ちの状態でずっと手つかずに放置されていたのだった。 勇次の熱い手の中に包まれ、それは待ちかねていたような反応を返し、先走りの滴を零した。
「やめろ―――ゃ――やめてくれ・・・っ」
「ほんとにやめていいのかい?・・・辛ぇだろ、秀―――このままじゃ辛ぇよな・・・?」
 染み出てくる液をまぶして濡れた音を立ててゆっくりとさすり上げながら、 子供がいやいやをする仕草で激しく頭を振る秀を言葉で嬲る。
「そんなにオレに触られるのが嫌なら、自分でやるかい・・・?」
 耳元で囁く静かな勇次の声が、体と同様ずたずたに傷ついた秀の心にさらなる爪を立ててゆく。
「自分で好くして―――気を遣るところをオレに見せてくれたら、今度こそ終わりにしてやるよ」
「そ・・・そん・・・なこと―――」
 出来るかと口走りかけたが、勇次がいきなり秀のなかから自身を引き抜いたので、声が詰まった。 床に膝もろともぶざまに倒れ込む。ところがやっと解放されたかと息を吐く間もなく、 今度は乱暴な手つきで体を表に返された。逃げる力どころか何の抵抗も出来ないうち、 押し開いた両足のあいだに勇次が腰を進め、またしても強引に押し入ってくる。
「いっ・・・ぅあぁっ・・・!」
 一気に奥まで貫かれた衝撃に、秀が思わず声をあげた。 暗闇のわずかな光源のもと、ふたりの視線がはじめて絡んだ。 ハァハァと息をもつれさせせわしく上下する汗に濡れた胸が、与えられる苦痛と熱とに潤み切った秀の呆然と見開いた瞳が、 闇に慣れた勇次の眼下に晒される。 自分のなかで勇次の硬度が増したのが秀にも分かった。
 力のまるで入らない膝裏に手をかけ、肩につくほどに折り曲げられる。 固い板間のうえで背中が軋んだ。秀の腰が浮き上がり大きく開かされた脚の間に、 着崩れた着物のままの勇次が正面から覆い被さる。
 顔の両脇に手を付いて、一度引いた腰をグッと突き込まれたとき、
「・・・?」
 秀の背が不意に弓なりに反った。今までにない感覚―――明らかな快感と呼べそうなうねりが突然背筋を駆け抜けたのだ。
「―――っ、・・・っ」
 これは俺のからだじゃない―――――
 続けて突き上げられながら秀は心中で声無き叫びをあげ、床に爪で縋るように足掻いた。 暴力的に犯されて感じるなどと・・・。これなら血を流す苦痛だけのほうがずっとマシだ。
 だが、これまでと違う秀の反応が勇次に分からないはずがない。 秀のからだが特に敏感に反応するところを探るように責め立てる。 居たたまれず秀はがくがくと震える口元に押し当てた拳を咬み、声を殺してもどかしさに身悶えた。
 怖れていた未知の重怠い疼きは、初めて味わう淫らな悦びへと変わっていた。 無理な体勢で二つに折られたからだは骨が軋むほど痛んでいるのに。 みっちりと奥まで入り込んだ勇次の抽送に合わせて、 自分もそんな場所があったことすら知らない箇所から、愚かしいほどの快感に充たされてゆく。 男の広い肩口で揺れる足の指先がきつく丸まり、また反り返った。
 顔を隠そうとする手を引き剥がし、勇次が頭上に押しつける。 短く息を吐きながら顔を見降ろしているのを、 目を固く閉じてその恥辱に耐えていたが、やがて合わさってきた唇が秀のからだにさらなる火を点けた。
 唇をこじあけて侵入した舌が歯列を割って奥まで入り込み、 息もつけず浮き上がる秀の舌を絡め取る。口内を深く探られるたび、穿たれた箇所までもが疼いて勇次を締め付ける。 勇次の宣告どおり、秀の意思とは裏腹にからだは勇次のカタチを覚え、 その狼藉を身に刻み込もうとするかのように自ら応えはじめていた。
 壊れる、壊される。暴かれて崩されてゆく・・・・・


「さ・・・秀。終わらせたかったら、このままで自分でやってみせな・・・」
 ようやく唇を解放してゆっくりと身を起こした勇次が、 投げ出されていた秀の手を取り、ふたりのからだの間でもうあと一歩の解放を求めて主張している秀自身に触れさせる。
「自分を憎むくらいならおめぇをこんなにしたオレを憎むがいいぜ。 おめぇが誰にも見せたくねぇあさましい姿もよがる声も―――。オレの目と耳にしっかり刻みつけてやるよ」
 酷く静かで優しい声だが、そこには一片の斟酌もなかった。 勇次はなんの感情も持ち合わせない瞳に、秀の絶望しきったうつろな顔を映しているだけだ。
 堕ちるところまで堕ちてきた秀をただ物憂く見つめたまま、勇次は低く囁いた。
「・・・これがおめぇの言う"救い"ってやつなんだろ・・・?」




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