秀の暴走回だと先に教えて頂いてワクワクしておりました。
理由はどうあれ(大体想像はつくが…)、天使の暴走は癒しでしかない!
今回もよろしくおつき合い下さい。
暗い夜道。しょっぱな若い女が誰かに追われて逃げています。 不穏な足音を聞きつけて足を止めたのは、お江戸の夜回り先生こと、三味線屋の勇次。 今夜は珍しく一人ですね、それに派手派手羽織なしのラフな着流し姿です。 居酒屋でちょいとひっかけて今からどこかに"ご出勤"か? 道沿いの小さな神社の境内に追いつめられた女が、簪を抜いて構えたため、 勇次は助けに入らずさっと隠れて成り行きを見る側にシフト。普通の女にそんな真似出来るはずがない。 とっさの判断通り、女は果敢に二人のチンピラ相手に立ち回りを演じ一人に怪我をさせます。 ちょうどその時、奉行所の夜警一行が巡回に通りかかりました。 路上に逃げ出してきた男たちに出喰わし、あやしい奴と追いかける捕手たち。 チンピラどもは取り逃がすも、後から現場に戻ってきたのは中村主水でした。 鳥居の前で女が落としたらしい大きな珊瑚玉のついた簪を発見、意味ありげに注視してから手ぬぐいに包んで持ち去ります。 そんな主水を、神社に隠れて食い入るように見つめている女の様子を、勇次は物陰から見届けるのでした。 その夜の中村家の夕飯時。夫の仕事着を片付けていた際、懐の簪を見つけたりつに責められる主水。 「何を云ってるんだ。わたしはあんた一筋でしょ?」 古女房への情愛なんぞ枯れ果てたように見えて、主水って時おりこういうことを言うからドキッとします(私が)。 しかしそんな言い逃れに誤魔化されないりつはすかさず反論。 「よくもそんなこと仰いますわね!わたくしに一度としてこんな簪を買って下さいました?」 怒るとこ、そこ?ピントがズレたままで会話が成り立つ似た者夫婦、好きです。 明けて長屋の朝。 井戸端に洗面に出てきている秀が、四、五歳くらいの幼い男の子に水を汲んでやっています。 ふだんと変わらない平和な光景・・・ん?何かが違うぞ。 半纏は袖を通しただけ帯も結ばず首に垂らしだけで外をうろついていた半裸職人が、 今朝は人並みに身だしなみを整えて井戸端にいる。 さらには見慣れない朱色の長尺手ぬぐいなんぞ粋にひっかけて―――。い、いったいどうしたヒデエル!?? その答えは秒で解明しました。男の子の後からやって来た美人を振り返り、 「おはよう、お絹さん」 快活に、しかし微妙にはにかんだ声で挨拶する爽やかヤングメン。 微笑んでうなづいたその女が釣瓶に手をかけると、「貸しな」と奪い取って即座に水を汲んであげます。 そこへやって来た加代が「秀さん、あたしもー」と甘えた声を出すが、無言で釣瓶を置きさっさと部屋に戻ってゆく。オイ! 「ちょっと待ちなさいよ!」 お約束だけど憤慨する加代に、近所のおかみさんが笑って秀のフォローを入れました。 「いいじゃないの。秀さんのあんな優しい顔、あたしゃ初めて見たよ!」 あーやっぱり。秀って長屋でも不愛想ぶっきらぼうで通ってたんですね。 何気に証言得られて得した気分、おかみさんセンキュー! つまり秀がさっきの子どもの母親を意識してるのは、長屋内ですでに知られてるようで。 てか、自ら派手な手ぬぐいなんて珍しいアイテムを身に着けて出てくるんだから。 あれは万年半纏男の精一杯のオサレのつもりだった? 不器用な口下手さんなので、『俺の心はいま燃えてます』アッピールなんでしょうか。遠回しなのに分かりやすっ。 序盤シーンだけで早くもハイテンションな妖精っぷり。こいつぁ先が思いやられます。 「いいのよいいのよ、あたしゃ一人で生きてくから」 と加代が開き直ってるところに、八丁堀がふらりと登場。 いつもの人別あらためという名の暇つぶしと自ら言いつつ、どこか落ち着かない様子。 その八丁堀に加代は、五日ほど前に越して来たばかりの子持ちの後家さんの話をします。 「秀がやけに優しく肩入れしちゃってさ」 部屋の外で煮炊きするその後家をチラ見した八、怪訝な顔して懐の例の簪を確認。 どうかしたかと加代に訊かれるも誤魔化して立ち去りました。すると入れ違いに、今度はふらりと三味線屋の登場。 「あら勇さん。ずいぶん早いじゃない、どうしたの?」 それとなくお絹の顔を盗み見た勇次、加代に向き直ると開口一番低く尋ねました。 「あの女、珊瑚の簪を着けてなかったかい?」 「あら、よく知ってんじゃない?どうしてよ?」 にやついて珍しく嫉妬無しの加代。勇さんの女がらみについてはついに諦めたか? そんな加代に勇次は、八に関する不穏な質問をします。 「誰かに狙われてるなんて話、聞かねぇかい?」 加代と八丁堀が十年来の長いつき合いと確認しての質問。 無印時にじゃあいくつの設定なのか。年齢がバグって分からんですね。 ともかく加代は質問の理由が気になって、勇次を自室に引っ張りこむのでした。 そんなことなどつゆ知らず、隣の部屋では秀が熱心に何かを作成中。傍らには例の後家さんちの子どもが居ました。 いつもの仕事じゃなさそうです。そう、少年のための竹トンボ! 「さぁー、もう少しで出来るぞ。出来たら河原にでも飛ばしに行くか」 「うん!」 いつも細工にのめり込んでいますが、今回の秀はまったく仕事してませんでした。うん、分かりやすくて可愛すぎる! 一方、加代に女を目撃した夜の話を打ち明けた勇次。 落とした簪を拾う八丁堀を睨む目つきが尋常じゃなかったことが気になって、 加代に探りを入れに来たわけですが、それにしてもその女がここに住んでいると何故分かったのか? あ、そうか。あのまま女の後を尾けて住み家を突き止めておいたんですね。 わずかな違和感でも念のため見過ごしにしないのは、さすがの仕事人。 「そうか。子連れの後家か・・・」 呟く勇次に、茶を淹れながら加代が言います。 「どうも秀さん、ホの字らしいよ」 「・・・」 ここで上がり框に腰掛けていた勇次の目の色があきらかに変わりました(笑)。 加代は背中を向けていてそれに気づかないまま、 お絹の物腰とか態度からして武家の出だろうと私見を述べます。 そのうえで、噂だけどお絹の喉元に刀傷があるらしいと不穏な情報を付け加えました。 「あんな顔してるけどさぁ、修羅場の二つや三つくぐり抜けてきてんね、あれは」 「・・・大丈夫か?秀」 女の話をしてるのに、真剣な目で身を乗り出したままの勇次の質問がコレだよ。 秀がホの字というパワーワードのせいで、勇次の中ではさらなる危険人物に格上げ。 しかし能天気な口調で、さらにヘヴィな事実をさらっと伝える加代。 「ん?ああ、その点は心配いらないよ。だって裏の仕事がバレたってさぁ、声出ないもん、お絹さん」 そういう問題なのかというツッコミはさておき、 喉を切られて声が出なくなったという謎の後家。八との因果関係。加えて秀の恋の兆し(要注意)。 勇次は険しい目をして考え込むのでした。 その頃秀は清太郎を連れて、出来上がった竹トンボを飛ばしに河原にやって来ていました。 もちろん母親(喉元に紫の布を巻いて隠している)もついて来ており、はしゃぐ秀たちを微笑みながら見守っています。 そんなお絹を振り返り、照れ笑いを浮かべてうつむくピーターパン。 憧れのウェンディせんせいに褒められて恥じらってる園児のように見えましたが、 今朝のアッピールはちゃんと女心に伝わっているんでしょうか? 微笑んでいても哀しみが色濃く影を落とす声の出ないお絹さんの本心は、まだ見えません。 場面は一転して、どこかの簡素な一軒家に土足で踏み込む複数の男たち。 リーダー格が借金の証文を突き出して見せて、 手下が家財を次々に持ち出してゆきます。浪人風の家主が、追いすがりました。 「それは我が家に伝わる大事なもの。借金は必ず返すから、それだけは―――!」 必死の懇願すら冷たく振り払い、それどころか武士を足蹴にまでするリーダー。 倒れ伏したところを他の輩が抑え込み、 隠し持っていた縄を首にかけ二人がかりで絞め上げた! 押し込みから強奪、殺しまであっという間の出来事。じつに手慣れています。 戦利品と共に連中が戻ったのは、上総屋と金看板をかかげた札差屋。 例のリーダー格・丑松が主人(あるじ)に、 家主の始末も含めて首尾を報告します。 貯めこんだ蔵の中をチェックしていた上総屋は、丑松と共に取り立てにいった二人組にお絹のことを尋ねました。 こいつらが、先日お絹を追いかけあべこべに返り討ちに遭ったチンピラだったのです。 「暗闇の利平といわれた俺だ。このまま引っ込んでる気にはなれねぇ・・・」 言い逃れる二人を張り倒し、丑松になんとしてもお絹を連れて来るよう命じるのでした。 さて、絞殺されたはずの浪人は、後日梁から首を吊った状態で発見されました。 「はぁ、また浪人者ですか」 「これでもう四件目ですよ。しかしまぁ、よくも次から次へと自害して」 「こりゃホントの自害ですかね?」 調べに来ていた主水はさすがに不自然に思って口にするのですが、田中様はまるで取り合いません。 ちょっと遺体アレルギーっぽいところがありませんか、田中様(笑)。 あまりじっくり検分したくないと見え、遺体現場はささっと終わらせがちですよね。 事件は現場で起きてるんではなかったですか!? ということで、取り合って貰えず近所への聞き込みに追っ払われる主水。 しかしこの聞き込みによって、 自殺した浪人たちのある共通項に気づくのです。 夜、加代んちで捜査で分かった共通点について話している八丁堀。 全員が浪人者だが、国元を出てきた時にはかなりの蓄えを持っていたらしい。それをすっかりはたいてしまっているのです。 「ふーん、なんか訳アリだね、八丁堀」 「うん、そこでおめぇにちょぃと頼みてぇことあるんだ」 すかさず手を出す加代に文句を言いつつも出してやる。今回真面目に仕事してるが、珍しいこともあるもんです。 八も何やら隠している模様。 加代宅を出て、向かいの部屋の破れ障子から中を覗くと、内職の繕いものに勤しむお絹がいました。 手ぬぐいに包んだ簪を取り出した八は、何を思ったか地面にぽとりとそれを落として立ち去るのでした。 その音に気づいたお絹が出てみるが、誰もいません。折しもそこへ、清太郎をおぶった秀が戻ってきました。 「どうしたんだい、お絹さん?何かあったのかい?」 訊ねるも、お絹は首を横に振って子を受け取ろうとします。しかし「いいんだいいんだ」と勝手に部屋に入って行く秀(オイ)。 秀の背中から子を受け取り、奥の間の寝床に寝かせるお絹。 その後ろ姿を切なく見てる秀・・・わぁぁぁ切ねぇぇ!! しかし何も言えずにくるりと背を向けるが、そこで足元に落ちてた簪に気づきます。 「こんなところに」 秀に拾い上げられてハッとしてやって来るお絹。 半纏の袖で丁寧に珊瑚をぬぐって、「これはいい品じゃねぇか」とさすがに見抜く秀。 そして「大事にしなきゃ」と優しく言うのです。 お絹も返事する代わりに黙って頭を向け、秀に簪を髪に挿してもらいます。 くううっ、言葉なんていらねーじゃねーかよ!むしろ邪魔! 言い知れぬ瞳を上げて微笑むお絹でしたが、 それを見つめ返した秀は上目遣いにニコッと笑い返すと(弱気)、 「じゃあな、おやすみ!」 言うが早いか、あっという間に戸を閉めて出て行ってしまうのでした。 ・・・ピュアすぎる・・・。ホントはいくつなんだおめぇ!十歳?むずキュンの極み!! これが三味線屋なら土間で唇くらい奪ってますな(口吸いだけで済むかさえ危うい)。 はてさて何も知らない妖精が幼稚園の砂場ごっこに夢中になっている間、加代は上総屋を嗅ぎ回るアルバイトをしていました。 さっそく蕎麦屋で八丁堀に報告。 「大した景気だよ、あの上総屋。浪人者たちはちょっと高利の金を借りただけで、 あっという間に根こそぎふんだくられて、あっという間ににっちもさっちもいかなくなったっていうのが真相らしいよ!」 誰からどうやってそこまで探り出したのか、加代の情報収集力恐るべし。 さらに金利といえば一般的には年に一割五分程度のところを、上総屋はなんと四割もとるらしいのです。この話に驚く八。 そんなヤバい店で金借りるなよ、犠牲者の浪人!とつっこみたいところですが、 全員が元々は財産持ちだったって点がおかしい。 狙いをつけた標的には、最初から奪って殺す目的で上総屋のほうから闇金を貸す話を持ちかけていたとしたら。 「なるほどそれでだ。上総屋が羽振りが良くなったのは、ここ二、三年だからな」 表看板は立派だが、裏では相当あくどいことで稼いでるようです。 八丁堀はひとり上総屋に乗り込みます。十手をチラ見せして「今日はコレで来たんじゃねぇんだ」と断りを入れ、 闇で銭を貸してくれるかと尋ねます。自ら囮になり、引っかけようとする八。しかし老獪な上総屋もさるもの。 「滅相もない。私どもはご政道に恥じることない商売をしております」 とシラを切るばかり。八はさらにもう一押しします。 「そうか、残念だな。ところであんた、・・・どっかで見たことあるな?」 「―――いえ、初めてお目にかかりますが?」 これにもシラを切りとおした上総屋ですが、あっさり引き下がった八丁堀に袖の下を渡して帰した後で、 手下たちを使いあることを画策するのでした。 今回ヒロインのお絹が口が利けないので、 彼女をめぐって悪党や仕事人がそれぞれに動いて過去の真相が判明してゆくという展開が、 スリリングで新鮮でした。そのため、ところどころセリフが説明っぽくなってしまうのは仕方ないことですね。 その後、ついにお絹はチンピラたちに拉致られて上総屋に連れ込まれてしまいます。 「久しぶりだなお絹。ずいぶん探したぜ・・・。好きなだけ叫ぶがいい、好きなだけな・・・へっへっへっ」←ド屑 奥の間にすでにスタンバイしてある布団の上で、お絹はせせら笑う上総屋に着物を剥ぎ取られてゆくのです・・・m(__)m そのころの秀、野原で清太郎と追いかけっこの真っ最中。全力で遊んでやっててすっかり兄?父親気分。 ゴルァ秀!なんだってこーゆう肝心なときに限っていないんだよぉぉぉ(ガクガク)!! そして地獄のひと時が過ぎ。 上総屋は呆然と横たわるお絹にある提案を持ち掛けます。それはまた昔のように、手引き役をやらないかという。 「欲を言えばキリがねぇもんで、またお店(たな)を狙おうと思ってな。おめぇならいざってとき口を割る心配はねぇからな。 どうだい?かんざしのお絹に戻って―――」 暗闇といいかんざしといい、裏の通り名の付け方が安直すぎんか?それはそうと表向きは札差をしつつ、 裏の顔はやはり盗賊一味だったんですね。 むろん拒否するお絹でしたが、あっさりと諦めてみせた上総屋、 「だがな。足を洗いてぇなら、ひとつ始末をしてもらいてぇことがあるんだ」 すぐに別件を持ち出して来ました。むしろそっちのが狙いだったと思われます。 「ちょっと目障りな男がいてな。あの世に送ってもらいてぇんだ。名前は・・・中村主水」 その名を聞いて、目を見開くお絹。 ドラマ冒頭、隠れて八丁堀の顔を見ていたお絹の表情に、何かあると直感的に見抜いた勇次の眼力、 大当たりぃ―――!! ここからちょっと長い利平のひとり語りが続き、それによってお絹と主水の因縁が視聴者にも解き明かされます。 が、果たしてそれが確かな真相なのか。 ここからがまた事情が混みあい、途方もなく長くなるので一度切ります。 この時点でまだ一度も顔合わせてない二人。あああー、すっ飛ばして早く勇次を秀と会わせてやりてぇ!! 続く ★ 妄言ノ間「目次」に戻る
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