三味線屋さんが失恋に落ち込んでいる間にも、 物語は怒涛の悲劇に向けて転がり出していました。


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恩地家では、変わり果てた姿となった主を同心たちが運んで来て、出迎えた加代が金切り声を上げます。
「旦那さま!旦那さま!!!」
寝所の妻が寝たままで会話出来るよう、いつも開け放った次の間で食事をとってくれた思いやり深き旦那様。 自分と横並びの形で次の間の布団に寝かされた骸を見て、
「伊織どの・・・」
抱き起こした奥様の肩にすがりつきむせび泣く加代をそのままに、物言わぬ夫に呼びかける日輪。 そのショックも覚めやらぬうち、さっそく本家が乗り込んできやがりました。
「無念でござった・・・」
「日輪様、葬儀の手配は当方がいたしますゆえ、何事もお申しつけ下さいませ」
わざとらしく涙声で言いながら、こんな場面でもう養子の件をねじ込む時枝。
「お引きとりください!!!」
夫の横死に本家が関わっていることは、時枝の強気の態度からも明白。 しかし証拠がないために追及できず、唯一の頼みの盾を失った女主人はいよいよ窮地に立たされます。 あまりの非道さにドラマと思っても腹立たしいのですが、 加代(仕事人)が一部始終を見ていることだけが救いです。


場面は変り、秀の長屋。
ガラッと戸障子を引くなり無言で侵入する勇の字。 オイこら、家主が真っ裸でお着がえ中とかだったらどうするんだよ(手伝う)。みんなの妖精にプライベートは無し。 入ってきた時点でもうロフトを見上げてますが、ニャンコを探すには高いところというのがお約束のようです(=^・・^=)
「秀?おい」
先日の勢いはどこへやら、神妙な面してるのは簪を返しに来たんですかい? せっかくの秀の心づくしがムダになったと。しかしそれを正直に報告しに出向くとはこれ如何に。
ははぁ、つまりは傷心を慰めて欲しい。なんならお泊りで・・・という下心もないとは言えまい(断言)。 これも八丁堀の目が光ってないからこそ、気軽に訪ねて来られたんですよね。 悪いけど八、もうしばらくは帰らなくていいから!
数秒のシーンで↑の妄想が広がっていたところで、
「よぉ」
三味線屋の背後からようやく家主が登場。 何しに来た、といつものような迷惑がる素振りも無く、すぐさま戸障子を閉めるなり深刻な声で勇次に告げます。
「加代が帰ってこねぇんだ」
「旦那(奉公先の恩地伊織)の後始末なんじゃ―――」
「いや、もう六日になる。まさか・・・」
ってことは失恋デーから少なくとも六日は経過。 二人とも、恩地さんが寺社の境内にて殺害された事件は市中のニュースで知っていたとして、 件の奉公先に行ったきり加代が戻ってこない。秀が独り気を揉んでいたところに勇次が訪ねてきたんですね。 いま居なかったのは、加代宅を訪ねて帰った形跡がないのを確認してきたんでしょうか。なんつー健気な子や・・・。
上がり口に腰をおろして話す秀を見下ろしていた勇次ですが、ここでスッと秀の前に片膝つきます。 ドキッ!いきなり何その紳士な振る舞い!?しゃがんで秀の目線に高さを合わせると、 顔を覗き込みながら静かに語りかけました。
「秀・・・行ってみるか?」

騎士(ナイト)発動━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!

真心を感じさせるスマートな言動、ハートブレイク後の勇さんならではの説得力があったのですが(勝手に)。
いつもは口喧嘩もたえず雑に扱ってるのに、帰って来なかった日を指折り数えて加代の身を案じている姫。 顔を見るなりその不安を訴えてきた秀に、勇次はハッと胸打たれたんじゃないでしょうか。 目線を合わせるためにしゃがむのは、相手の苦しみを分かち合いたいという意思の表れ。 損得ぬきで人を想う秀の真心を見せられて、勇次自身のどんよりした寒い心にも温かな光が射し、 優しい風が吹いたと・・・(ドリー夢)。これをエンジェル・ヒーリング(本人無自覚)と呼ばずして何と言いましょうや?
ああ〜、推定10秒のこの場面ひとつで、心が通いだしたふたりの距離感まで見てとれましたよぉ。 そんな勇次を見つめかえし、無言でうなづく素直な秀。
ほーら勇さん、実(じつ)のある恋愛をしたいんならここに最高の相手がいるってこと、分かったよね!?(説教)


恩地家に上がりこみ勝手に仏壇に焼香する時枝。すぐ傍らには病人が寝ているというのに。 加代は隣室に控えて陰で話を聞いています。
「日輪さま。初七日が終わりましたら信之丞を連れてまいります。 養子縁組等の手続きは当方が役所に届けました。では失礼いたします」
もう日輪ひとりの力ではどうにも出来ないと知って勝ち誇った鬼婆は、言いたいことだけ言うととっとと帰って行きました。 日輪の目尻から一筋の涙が流れ落ちます。呼ばれて加代が枕元にゆくと、
「今まで色々ありがとうございました。(金一封を差しだし)これを持ってお引きとり下さい。少のうございますが・・・」
「奥さん・・・」
「伊織どのが待っています。おそばに行きたい・・・」
一方、勇次に背中を押されて恩地家にやって来た秀。裏の勝手口を小さく叩いて控えめに呼びかけます。
「ごめんください。―――加代さん?ごめんください」
やがて加代が出てきてふたりが会話するのを、門の外で一人の侍が聞いていました。


場面は変り、どこかのあばら家。さっきの侍が仲間二人に責められています。 それは信之丞、どうやら先の恩地伊織殺しの報酬が未払いのままらしいのです。
「義兄(あに)からまだ貰ってないんだ!」
詰め寄られる信之丞、情けなし。 しかし約束すら守らない将監はもっとしみったれてますね、芸者囲う金はあるのに。
揉めている三人を物陰からこっそり見届ける細身の影。 さっきの秀は、何者かに加代との会話を聞かれているのを分かってたと。 そうしておいて尾行した。誘導作戦だったっつーわけか。 さすが本気出すと機動力ばつぐんの秀(きっと勇次と相談したに違いない)!
密談を聞かれてるとも知らない信之丞は必死で弁解しつつも、あべこべに仲間たちに懇願します。
「金は明日までになんとかする!だからあの女中をなんとかしてくれ!」
「女中?」
「頼むぞ!!」
一方的に仲間たちに邪魔者の始末を押しつけると、説明もせずに逃げ去る卑怯者でした・・・。


さて、ここでようやく真打の再登場――(気のないパチパチ)。
江戸から逃げた下手人の引き取りに出羽に赴き、罪人を収監した籠を見張りつつ無事に戻ってきた八丁堀。 小伝馬町に送り届けて奉行所に報告に行くと、
「おお、中村さん。おつかれ様でした!」
にこやかに田中様が出迎えます。いまはゆっくりして下さいと珍しくストレートにねぎらわれます。 それなら恩地さんの奥さんの見舞いに行きたいと言いかけるも、田中様が沈鬱な表情で切り出しました。
「恩地さんにはとんだことでした。・・・殺されましてね・・・」
何を言われたのかわからずポカンとする八丁堀。
「・・・殺された?」
現役同心が殺られたことで北と南双方の奉行所で躍起になって捜査しているが、下手人はまだ上がってないとのこと。 何が起きたかは知らないが、家庭の事情で揉めてることは知っていただけに、やりきれない表情の八丁堀です。 こんなときに限ってまともに優しい上司のいたわりの言葉もかえって堪えます。
ともかく恩地家へ弔問に参じる八丁堀。対応したのは本家の妻女。
「奥方はどうなさっていますか?」
手を合わせた後で、一言おくやみを言いたいと時枝に切り出すも、
「あれから人に会うのを嫌がって、どなた様にも失礼させていただいております」
と冷たい答え。引き下がるしかない八丁堀でしたが、なんと奥の間では日輪が移動した布団を侍たちに被せられて、 助けを求める声すら出せなくされているのでした。もはや生き地獄の態。
八丁堀が違和感感じてくれて良かったよ、急いでくれ!


場面変り、隠れ家に仕事人集合。加代や秀からことのあらましを聞き、激昂する八丁堀です。
「ちくしょー!あの女狐やろう!!」
格子を掴んでがたつかせて悔しがる。 せっかくこれから仲良くなれそうだった同僚がこんな残酷な死を遂げたとは。仕事人としても見過ごせない!
「とにかく生かしちゃおけねぇな!」
加代と顔を見合わせた秀、なぜか八丁堀とは入れかわるように出口の方に向かいます(猫の謎行動)。 そこで今まで黙って話を聞いていた勇次が呟きました。
「あの井川って野郎。・・・どうするか覚えてろ」←意外と根に持つタイプ?
「おい?おめぇやけに井川にこだわるな?なんかあるんじゃねえのか?」
変に鋭い八丁堀(笑)!
「何もねぇよ(ぼそっ)」
じろじろ見てくる二本差しのうざい視線を避けるように、
「・・・とにかく、許しておけねぇってことだ」
ちょっと焦り気味の勇さんが可愛い。 加代のことでうやむやになってたけど、秀には小玉の件は説明済み?
その疑問に対する答えは、秀逸なるカメラワークにて解説されました。 すなわち、疑わしい視線を三味線屋の斜め後ろから当て続けている八丁堀から見たアングルで、 勇次の横顔アップの向こうに秀がスッと浮き上がり、格子ごしに勇次を見つめている顔が重なるという!
この秀の表情・・・もうすべて了解済みなんだね。 『他でもねぇ』勇次の恋の仇でもある井川を、秀も野放しする気はねぇと黒目がちの真摯な瞳が物語っております。
「―――おい、おめぇら、なんかあるな?」
おめぇら、とセット呼ばわり!さすが鼻が利く八丁堀。 自分が出張する前後では、この場の雰囲気になにか違うものが醸されてる、と肌で感じている模様です。 若いオス同士のトガッた自意識の突っ張り合いがない。 まさか秀、八にそれを感知されることを恐れてひとり離れた場所に逃げた!?
しつこい八の追及を逸らすべく(秀の行動を把握)、勇次がガツンと言い返します。
「ひと月も江戸を離れてやがったくせしてえらそうに云うな」
その割には『うぜぇ奴がまた戻ってきやがった』という気持ちが駄々洩れの勇次(笑)。
「へっ、おめぇらオレの居ない間に、下手なこと考えやがったな?」
勇次の心中(べつに下手なことは考えちゃいねぇが。あんたに関係ねぇ秘密が出来たってことだよ、秀とな!)←わりと陰険
しらを切る勇次に同調するように無言の秀。 男たちの微妙な緊張感に割って入ったのは加代でした。 自分が女中奉公で忙しくしてる間に勇次が秀んちに居たりなんかして、 なにやらふたり結託しちゃってることは勘付いていたけど、 何も知らなかったふりして本題に話を戻す加代の機転がその場を救います。
「これは恩地の奥さまの願いなんだよ!勇さん、秀、頼むよ、ね!―――これは仕事料だよ」
日輪さまから最後に渡された包みを皆の前で広げた途端。 格子の向こうにいた秀が真っ先に動きました。
勇次の背後をするりとすり抜け戻ってくると、並んだ小判を一枚とってすぐさま外へ走り出てゆく。 この動きもうやる気満々だよな。前回の勇次に気合の入りっぷりが重なります。
恩地さんの仇を討ちたい八もこれ以上は追及せず、全員が金を受け取って仕事成立。


その夜の恩地家。病人を加代がそっと起こします。
「奥さま。旦那さまのお墓参りにまいりましょう。駕籠も用意してございます」
こんな時間にいったい何事、とは尋ねない日輪様。 すでにこの世に見切りをつけた人は、どんなことにも動じはしません。ただ、信頼できる加代の言葉に黙って身を任せるだけ。
加代がおぶって外に出て、駕籠に乗せました。 そして駕籠に並走して暗い夜道をひたひたとどこかに向けて出発するのですが。
ここで正面から駕籠かきの顔が映ってびっくり!? なんと丸い編み笠に茶系の半纏、脚絆というペアルックに身を包んだコンビは、前が勇次で後ろが秀!! 変装しての裏仕事は初めて見たのでとても新鮮でした。 秀はともかくとして、勇さんのワイルドな駕籠かき姿も意外に似合ってる!(笑)
怪しい一行の行く先は井川家でした。 出てきた下男に加代が、 信之丞を吉原から送り届けてきたと虚偽を伝えてまんまと敷地内に侵入成功。 駕籠のお代を貰うためと言って奥の庭先までまわり、駕籠は静かにそこに降ろされました。
まずは秀が先発で外から潜入。すでに変装からいつもの戦闘服姿に戻っています。 時枝が居室でひとり、鏡台の前で簪など抜いて就寝前の支度の最中。 しかし灯りがついていない開けっ放しの隣室に、なにやら不審な気配を感じた時枝、 訝って様子を見に足を踏み入れたところに、すかさず隠れていた秀が襖を閉じる。
長い打ちかけの裾を襖に挟み動けなくして、背後の閉じた襖の合わせ目から盆の窪を一突き! 襖をスッと開けるなり崩れ落ちる寸前で、 時枝の体を片手で抱きとめる秀の流れるような所作さよ・・・(無表情が美しい)。


やがて、いつまで経っても寝所にこない妻を呼びにぶつぶつ言いながら様子を見にやってくる将監。 こいつ愛人とは別腹で、妻の相手もしてるってことか? 性格が怖い妻を敵に回さないためかも知れんが、夫としてはまぁ合格。が、人としてもはや失格です!
暗い廊下を歩いてくる将監の背後、外から開いた障子ごしに裏仕事の正装した色男の影が浮かび上がる。 さあ、さっき秀が時枝を抱きとめた理由がここで分かります!
将監が部屋に入ってみると、閉じたふすまを背にしてぼんやりと立ち尽くす妻の姿。
「おい?」
近づいて手をかけると人形のように倒れてきて、そこで妻が死んでいることに気づく将監。
「時枝!!?」
驚いて声をあげる男の首に、三の糸が飛ぶ!巻きついた糸を掴んだまま、外に向かって走る勇次。 パニックになりつつ糸に引きずられて小走りについてゆく将監。 ここで秀、再び登場!!!
勇次に先だってパンと障子を開け放ち、外に飛び出しました。それは運んできた駕籠が待機する中庭でした。 加代が御簾を上げて、中の日輪様がいま起きている一部始終が見られるようにします。
秀に続いて出てきた勇次、なんと駕籠をひとっ飛びして向こう側に着地!?いや、画像ではそこまで見えませんでしたが、 その後の動きから駕籠の上を飛んだとしか考えられないので。 勇次、秀ばりに身軽じゃねーか!(見てた秀がライバル心を燃やすとよい)
しかもですよ、勇次が着地したと同時に、秀が障子をすぐに閉じてしまうのです。 首に糸を巻きつけられた憎き男が泡を食って引きずられて来るまでは見せても、締め上げからのフィニッシュはシャットアウト。
〆たあとで、秀が再度スッと静かに障子を開けると、悶絶の表情で夫の仇が床に倒れ込むところを見た日輪様。 くうう〜この絶妙なコンビネーション!タイミングがほんのわずかにズレていても成功しない、 サーカスの空中ブランコ級難易度の完ぺきな仕事ぶり!これも事前に打ち合わせたのか・・・どんだけ息が合ってるのか(痺)。
日輪様が倒れ伏す仇の死体を見届けたら、すぐに加代が御簾を降ろしました。 すかさず駕籠かきのふたりが駕籠を持ち上げ、粛々と中庭を出てゆきます。今度は秀が前(笑)。 ペアルックは最初だけでしたが、 恩地家で落ち合ってから変装したんだなと想像すると可愛くて悶えます。 三人ともミッションお疲れっした〜!!(大喝采)


でもって、真打の仕事がまだ残ってましたよぉ。 ずっとメモを取りながら視聴してるんですが、裏紙A4紙15枚にも及ぶメモのなか、 私の記述は勇秀の仕事完遂から先、ぱっつんと白紙になっていることに今になって気づきましたw ふたりの活躍が終わったところで、すでにすべて済んだことになってたらしい。すまん八丁堀m(__)m
メモがないのでここからはうろ覚えの記憶に頼るしかないのですが(雑)、 例の若侍三人衆は居酒屋で宴会の真っ只中。 暗殺の報酬を受け取って機嫌を直した二人組も信之丞も、 すでに女中のことはきれいさっぱりと忘れてる様子。 ま、数日後にはもう自分は恩地家に入るわけだし、 日輪の世話をしている女中など、恩地家におさまってからでも処分すればよいと。だがもう遅いのよ・・・。
立ちションベンに外に出てゆく仲間ふたり。 そこにのっそりと路地から表れた八丁堀が、見咎めて声を上げるも、身なりから旗本の御家人と知って低頭謝罪。 どうやら士官の口も貰えそうで、気が大きくなった馬鹿どもは八丁堀が同心と見るや嘲ります。 が、その刹那、目にもとまらぬ居合抜き! ふたりほぼ同時に絶命。
中では信之丞がふらつきながら窓辺に近づく。なかなか戻らないふたりがまだ壁を向いて立ったままでいるのを見て声をかけます。
「おいっ、いつまでションベンしてんだよぉ(笑)」
と言って閉じた障子ごし、外から影を一突き。ジ・エンド。
居なかった八丁堀がひとりで実行犯三人片付けたので、 貰った金に見合った仕事をしましたってことでさすがはリーダーですね(今さら)。八さん、今度こそお疲れさんでした〜!


いつもならここで中村家コントに移るところですが、この物語には衝撃のラストがありました。
夫のもとに早く逝きたいと呟いていた日輪様、加代が見つけたときには仏壇の位牌の前で喉を突いて自害していたのです。
結婚した頃から若くして病みついた妻に、献身的に尽くしてくれた夫。 その夫の愛に今生では充分に報うことは出来なかったけれど、あちらの世ではきっと・・・。
肉体の苦しみから解放されて、愛する伊織のもとに自ら旅立った日輪。 きっと家は再興不能としてお取り潰しになるでしょうが、 欲まみれの身内らに群がられるよりも夫妻の望みに叶う終い方ではないかと思いました。


ぜぇぜぇ。や、やっとラストまでたどり着きましてござりまする(苦闘)。 どんどん果てしなく長くなってるな・・・。 ツボった箇所はしつこく!ハート(いやリビドー?)の感じるままに!なんの決意表明?
今作も見ごたえたっぷりでした。公式様、いつもいつもありがとうございます! ここまで妄言放言に延々とお付き合い下さり、ありがとうございました。



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