秀宅シーンだけで中編を丸々費やしたので、ここからは本筋を進めていきたいと思います。 今度こそサクサク行きますよ!(毎回言ってる) てことで後編1。←
萌えの大渋滞が起きてそっちばかりに目がイッてますが、加代の奉公先の恩地家の夫婦愛にも涙を誘われました。 この先も秀と勇次のバディぶりは裏仕事にまで及び、予期せぬ神回だった!という今作品。
主水の不在がこれほどまでに二人を密にするのなら、 中村様にまた大役の出張入れてあげて下さい!と匿名の嘆願書を目安箱に入れたい気持ちで一杯です。


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お金があっても買えないもの。それは寿命と健康。
恩地家は同心の夫が寝たきり妻を介護して、ひっそりと寄り添って暮らしていました。 夫婦仲はとても良いが、頼れる親戚は居ないようです。
居るとすればそれは、妻側の本家筋に当たる貧乏旗本・井川家だけ。 ところが井川夫妻は強欲で、恩地家の財産を狙っていました。 恩地家に跡取りがいないことに目をつけ、妻・時枝の実弟を養子にして家督を継がせるようにと強引に話を進めようとしているのです。 主水が招かれた夜、押しかけて揉めていたのは現当主の将監でした。
ある日、出世の見込みもなさそうな弟・須藤信之丞を連れて、時枝が乗り込んで来ます。 本家の者がこの家に入るのは筋として間違いがない、との持論を振りかざして枕元で迫りますが、毅然とした態度で断る日輪。
「恩地の養子は伊織どのが決めます。他人のあなたの差し出口は余計です!」
女中の加代は遠慮して下がろうとするも、「ここにいて下さい」と日輪に留められ、 しかも加代にこの家に入って貰うことを夫とふたりで相談して決めたとまで言い、皆を驚かせます。
時枝は激昂するも、日輪の寝たきりとも思えない激しい剣幕にひとまず退却。


本家に戻った時枝は、さっそく不首尾を夫に報告。将監は次の間に控えている信之丞に尋ねます。
「で、いつやる?」
口で言って聞かぬなら、強硬手段に出るだけ。 思った以上に強情な金持ちの分家が、どこの馬の骨とも知らない町人を家に入れてしまう前に手を打たねばならぬ。 そもそもいずれは信之丞の仲間ふたりを使って、伊織を襲わせようと計画していたのでした。
信之丞はこの時点では、財産獲得のためにここまでやる義兄たちを恐れて従っている感じ。 この主体性のない悪というのが一番始末が悪いんだよなぁ。


恩地家では加代が来たことで勤務も通常に出来るようになり、田中様のご機嫌も治ったとのこと。 ふたりの人柄の良さと垣間見た家庭の事情に同情し、今では親身に仕えている加代です。
伊織が出かけた後、夫にばかり苦労をかけて申し訳ないと心情を吐露する日輪。 家付きの妻をもらったとはいえ、夫のために何ひとつ出来ない自分を悲しんでいるのです。
「優しい旦那さまでお幸せですね・・・」
加代がフォローを入れるも、
「・・・幸せ・・・でしょうか。わたくしはやっぱり加代さんのように動き回れる人がうらやましい。 ・・・お金で買えないのです」
切実な言葉にうつむくしかない加代。寝たきりでいると、夫がよそに女をとか自分を置き去りにして駆け落ちするのではなど、 疑心暗鬼の妄想が次から次へと浮かんでくる。
「尽くして頂いたあげくに、こんな恥ずかしいことばかり・・・。―――やっぱり、女なのです。わたくしも・・・」
やつれても気品があり美しい日輪様が、ここまでダークな本心を打ち明けるとは。 恩地さんに八丁堀が請け合った加代の『気のいい女』っぷりが、日輪さまの誰にも言えない女心を素直に開かせたんでしょうか。


一方、伊織は市中見回りの任の途中、神社に立ち寄り願掛け参りをしていました。 妻の快癒を陰ながら祈るなんて、真心から愛していなければ出来ないこと。
そこに忍び寄る怪しい人影。信之丞含む侍三人組。まず信之丞が単身で声をかけて、口実を作って人目につかない場所へと誘導。 そこに潜んでいた仲間ふたりが突然襲い掛かったのです!!
不意打ちでふたりがかりでめった刺しされ、 むごたらしく絶命する伊織。 あまりのあっけない最期にボー然・・・。とんでもない悲劇が起きてしまいました。。。


場面は一転して、義兄が一席もうけた料亭・花乃井にて首尾を報告する三人。
「そうか、うまくいったか!」
ハッハッハと高笑いの将監、クズの中のクズです。 だまし討ちにさすがに浮かない顔の義弟たちに、酒を呑んでこのことは忘れろと勝手なことをほざきます。 てめぇは手を汚さずしてよく言えたもんだ。 それに信之丞とて、誘導役ばかりで自分は手を下していない辺り、 この一族は性根から腐ってるってことですよねっ!
頃合いを見て料亭の女将が挨拶に上がり、将監の馴染みの芸者が登場します。 その芸者ってのが、・・・おんや?どっかで見た覚えあるぞ??
芸者を外の廊下に連れ出す将監。そして含み笑いで囁くことには、
「小玉。女将に話は通してある。明日から座敷に出なくていいぞ」
「ほんとですか?」すぐさま目を輝かせる小玉。おおぃ!!?
「金が出来たんだ」
実際にはまだ手に入れてないのに、伊織を消した時点で財産のっとり確定したと思ってるアタオカ発言。 しかし小玉は「わぁ、嬉しい!!」と喜色満面でパトロンに抱きつき、将監もワハハと笑って受け止めます。
ははぁ…そーゆうこと。 秀の言葉を借りれば、惚れられるんならイケメンがいいが金持ちの魅力にはかなわないと。 秒で捨てられたイケメンの立つ瀬はないですが、嬢の一切の迷いの無さはいっそ爽快でした(笑)。
やっぱり勇次と秀の絆を深めるために用意された当て馬だったんだよね〜(^O^)


さて何も知らない勇さん(気の毒…)、三味線を届けに花乃井の門をくぐりました。 ついでにカノピッピに会えるかと鼻の下を伸ばしつつ、出てきた女将にお愛想を言います。
「奥はにぎやかですねぇ」
「ええ。井川様が小玉ちゃんを落籍(ひか)せなさることが決まってねぇ」
ふたりの関係を知らない女将の一言で、営業スマイルのまま凍りつく色男。ブフォ…す、すまねぇ勇次! 笑ってはいけないと思いつつ、ショックすぎて固まるきよし様の演技が絶妙すぎて・・・!
秀の簪をさりげなく挿してあげるつもりでいたはず。 やがて張り付けたような笑みがスッと消えうせ、眉根を寄せて沈黙するも忙しそうな女将は気づかず。
「勇さんも小玉ちゃんに会ったら、おめでとうの一つも言ってあげておくれ。お旗本の囲われ者だなんて、大した出世じゃないか」
恋より金をとった女の真実を知らされ、すごすごと立ち去る勇の字でした・・・(´;ω;`)


その夜遅く。幇間をお供に三味線屋を訪ねてきた小玉は、悪びれもせず猫なで声で謝ります。 女将に勇次が来たこと聞いて開き直ったんですな。そんな女に背を向けて撥を磨くフリをしつつ、低い声で勇次は答えます。
「なぁに、おめぇを責めてはいねぇよ。祝言しようの所帯を持とうの云うようなオレじゃねぇ。しがねぇ三味線屋だもの」
いつも自信に満ちた勇さんらしからぬ、ため息まじりの超ネガティブ発言。 ですが付き合うったって夫婦約束のつもりじゃなかったんだし、あくまで色の遊びだと自ら認めていますね。 小玉とは自由恋愛のつもりだったのよね、勇さん。 だから女の裏切りを責める立場でもないが、男のプライドは傷つけられたと。
「んもう!そんなこと言わないでぇ。お前さんにホントに惚れてたんだものぉ(とすり寄る)。 ね?決してだましたんじゃない、分かっておくれよぉ」
「三味線のご用は変わらぬごひいきを」
一切顔を見ず、終始伏し目のまま他人行儀に返されて、小玉はフンと鼻を鳴らして去ってゆくのでした。 ひとりきりになった部屋で、ぽつりと呟く勇次。
「仕事人の惚れた腫れた。・・・このへんが相場だ」
今回は女の方の身勝手による短い恋で終わりましたが、 裏の顔を隠して生きる仕事人と一般人との恋は、所詮こんな風な流れ星。 深まることは決してないと割り切っていながら、本当の愛を夢見たい時もある。
仕事人の孤独とそんな己を自嘲する珍しくおセンチな勇さん、失恋してもやっぱりカッコいいよ!(贔屓目線)

〈続〉



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