24話ですが、内容が重いのと、天使がまたやらかしたせいですぐに感想がまとまりませんでした。 そんで取りあえず、今作のハイライシーンを小話にして先出ししました。 ほとんどこの場面だけで、秀の心はスケルトンなんですけど!(断定)
シリアスと萌えとちょっぴり笑いと、様々な味が盛り込まれた幕の内弁当のようなお話でした。視聴感想も上げたいと思います。


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「勇次に雇われるなんてやだね。誰があんな気障野郎に」
 細い桟橋の上でわざわざ寝転ぶ必要があるのかと加代は思ったが、 天邪鬼は例によってプイとそっぽ向き、つれない返答をした。
 しばらくは良い感じで馴染んできていたように見えていたが、何があったのか、 ここ最近になって秀の三味線屋の色男への態度は再び硬化してきている。ただしあくまで表面的に。
 いい加減つき合いも長くなると、それが本気の意地かそうでないかくらい声の調子で分かってしまう。 指摘して苛めてやりたい気もするが、もう時間があまりない。 人質となった勇次が窮地にあることは確かなのだから。加代はつとめて穏やかな口調で、 秀の懐事情に訴える作戦に変えた。勇次のために働きたくなくとも、金欠続きでは暮らせまい。
「贅沢云ってらんないよ。あたしんちにももうお米ないし」
「武士は食わねど高楊枝っていうだろうが」
「武士じゃないだろ!あぶれて食えない町人だろ、あんた」
 今朝の朝飯さえ恵んでもらった分際でなにを偉そうに。 この天然ボケぶりには慣れっこでいるつもりでも、時々開いた口が塞がらなくなる。 仕事は表も裏もきっちりこなせるのに、己に関しては詰めが甘いというか無頓着すぎるというか。
 勇次に対するむやみに辛辣な態度も、それだけ過剰に気にかけているせいだろうと傍から見ても分かるのに。 しかもそれが当の勇次にさえ伝わっていることに気づかず、本人は憎まれ口を叩いてはすかした態度で格好つけている。 見てるこっちが恥ずかしい。勇次は完全に面白がっている。
(どうしようもないわ・・・)
 女の自分のように堂々と近づかず遠回しに意識するほうが、感情としてはよほど隠微な恋に近いと思うのだが。 まあ、勇次が自分にまるで興味がないと分かった時点で、加代にとって秀と勇次がどうなってゆこうと関係ない。 むしろいがみ合うよりかは理解を深めていってくれる方が、仕事もやりやすいというものだ。 そんなことよりも、いまは説得が先。
「それにさ、おりくさんも危ないんだよ?」
 問題の矛先を、秀も一目置いている三味線屋の母に向けると、天邪鬼は他愛なく食いついてきた。
「えっ?それじゃ仕方ないかぁ」
 言うが早いか素早く起き上がる。不本意そうに唇だけは尖らせつつも、黒目がちの瞳が俄然光を増し声は弾んでいた。 放っといたって駆け出したんじゃないのかホントは。
「かっこつけんじゃないよ!さ、急いで急いで!」
 ドッと脱力しながらも加代は、半纏の背中をパンと叩いてけしかけてやった。



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