なんと言っても今回一番のトピックは、


【母の帰還】(LOR風に)


 やったー!おりくさんお帰りなさいまし、お待ち申しておりました!!
 第三話でお房の遺した赤ん坊を胸に旅立ったおりくでしたが、なんと赤ん坊はある事情で死んでしまいました(嘆)。 赤ん坊と貰い乳をしていた女の仇をとるため、 たった一度きりの裏の仕事をしようと標的(まと)の絵師を追って江戸に戻ってくるおりく。
 赤子を守れなかった自分はもう息子に合わせる顔がないと考えていたが、 その頃勇次もまた別の依頼で、件の絵師を仕事にかけようとしていました。 図らずも同じ標的を狙って鉢合わせするとは!この母子ならではの因果な再会・・・。劇的筋書に拍手です!
 さて再会の喜びもそこそこに、早速仕事の話に切り替わるところもさすがのふたり。 顔を見ればもう余計な言い訳も要らないほどに、普通の会話に戻っていました。
「だめだよ八丁堀は。わが身大切で気がちっちゃくて」
「用心深くてしぶといんだよ。だから頼りになるんじゃないか。そんなこと言ってるから、勇さんは仕事が甘いんだよ」
「・・・・・・」←おそらく白目剥いてる
 沈黙の勇次を気の毒そうにチラ見してる加代のリアクションが面白すぎた。 クールガイの面目なんぞ歯牙にもかけないおりくさん、ライオン式子育て方針はいい大人になろうと終わってないようで(^^;)。 息子に見つかった時の輝くような会心の笑顔からのバッサリに、 加代でなくとも心からの笑…もとい同情を禁じ得ません。

 今回の勇次は、八丁堀からも恫喝されるは「二度もドジったヒヨッコ」呼ばわりされるは、 年長者からのさんざんな怒られ回になってちと気の毒ですね。母の留守中に羽を伸ばしすぎたツケが回って来たようにもみえますが、 怒られ勇さんも新鮮で可愛いから、私的には結果オーライ。
 一方、若手組はそんな勇次に同情的です。加代が必死で庇うのはいつものことですけど、 まさかの秀までも不器用に勇次のフォローに回るなんて!注目の勇秀接触シーンを挙げると――――
・裏の仕事を持ち掛ける勇次を恫喝して八丁堀が去ったあと、無言の勇次に近づき去り際にフォローを入れる秀。
・店外の縁台に腰かけ、たまには鰻を食いたいが先立つものがな〜と愚痴りつつ、加代と秀が蕎麦を啜っている鼻先を、 片手に徳利をぶら下げた三味線屋が通りかかる。「おっ昼間っから酒か!」目ざとく声を掛けてる秀。
「おふくろに頼まれたんだよ」とさりげなくぶっ込まれた行間ネタに萌えてるうちに、 当然のような自然さで色男がちゃっかり秀の横に座っておりましたぁ〜!!
 秀も避けることなくピタッと肩を並べてます。このクソ暑いのに!会話中もやけに顏近いし表情に剣がないし一体どした!

 萌えシーンばかり取り上げてると訳が分からないので、視聴感想としては話の先も進めなければなりませんね。
 裏の仕事にしたいおりくが、まんまと八丁堀の口説き落としに成功するも、 最初の標的であった絵師は、仕事人の手に掛かる前に非業の死を遂げます。 実はその背後にもっと大きな悪と陰謀が控えていたことを知り、そのカタもつけようとさらに焚き付ける。
 しまいには八丁堀も、 「まったく…おれがいねぇと何にも出来ねぇんだからよ」とまんざらでもなく仕事料をせしめて立ち去るのでした。
 そこでも秀、取り分の小判を手にした後で、やおら瞳をあげて勇次を間近でジッと(キッと)見つめてから出て行きましたが、 あれはなんのアイコンタクトだったの?あの黒目がちの瞳で見据えられちゃ意味深すぎてヤバくない?
 ほんとにここ数話以来、秀からのアプローチがじわじわと増えてきて、 だったらこれまでのツンツンと無関心は一体なんだったんだ。ポーズ?と問いただしたい気持ちで一杯です。
 おそらく最初の人見知り&警戒が解けた後の、 ライバル心と好奇心に煽られて無意識にかまってしまってる段階ではないでしょうか。 本人は気を許したつもりはなく、言いたいことを言っちゃってるだけと思いますが。
 何食わぬ顔して隙あらば近づいている三味線屋さんは、肚のなかでほくそ笑んでいることでしょうな。 

 ということで、今回も嬉しい見どころ(ツッコミどころ)満載でございました。 これからまた三味線屋で親子の会話も楽しめるのが嬉しいです。
 ところで今ふと思ったのですが、勇次は秀んちに泊まったことをおりくに話したんでしょうか・・・? 私の想像では、言わなかった(黙ってる方がやましい)が、加代経由でバレたと思います。。。


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「秀、頼む。このとおり!」
「断る。帰ぇれ」
「今夜だけでいいから、なっ」
「くどいぜ勇次!」
 暑苦しい二階の作業場にまで上がってきた男に膝詰めで迫られ、秀はたまりかねて声を張り上げた。
「俺は仕事中なんだよ!これ以上邪魔すんなら痛い目みるぜ!」
 手にした小槌を細工ではなく目の前の男の鼻先に突きつけて威嚇したが、 今日の勇次は本気で弱った顏つきのまま上目遣いに見つめてくる。 いつも涼しい表情を崩さないのが苛つく三味線屋とも思えぬ情けなさに、内心拍子抜けしているのはこっちの方だ。
 それというのも、母おりくが江戸に舞い戻って再び同居を始めてからだ、勇次が度々訪ねてくるようになったのは。 裏稼業から足を洗うと上方へ旅立ったが、育てるつもりの赤ん坊と恩を受けた女の無残な死に遭遇し、 ふたりを死に追いやった仇を追う形で秘かに戻ってきたのだ。
 絵師としての立身出世の為に家族を捨てた男を、裏の仕事にかける為に動いていたが、その前に男は謎の死を遂げる。 実は絵師も出世を餌にして利用された捨て駒であったこと、いつかは妻子を呼び寄せるつもりでいたことを、 今わの際に本人の口から聞かされた。背後には、大奥絡みの陰謀を企てる黒幕がいたのだ。
 結局おりくは、息子の勇次だけでなく八丁堀ら他の仲間をも巻き込んで、黒幕ごと潰す仕事を完遂させた。 その手腕もさながら、狙った獲物を粛々と追い詰めてゆく執念には、仕事人として背筋を寒くするものがあった。 八丁堀をして決して敵に回したくない相手だと後日呟かれたが、それには秀も加代も同意しかなかった。
 その後、そんな母から「まだまだあんたは仕事が甘くって心配だね」と言われたとげんなりした様子で勇次が打ち明けた時には、 こいつもヒヨッコ呼ばわりかとちょっと小気味良かった。 鷹揚に慰めてやるつもりで、勇次を誘いふたりで一杯やりに行った秀だったのだが・・・。
「そう冷たくするなよ。もう、一晩過ごした仲だろ」
「なっ…誤解されるよーな言い方すんじゃねぇ!!あん時ゃ非常事態で仕方なくだっっ」
 一度泊めれば次もあると思ったら大間違いだ。母の帰還を喜んではいても、ひとりの気ままさに慣れると、 毒舌と小言が待っている家に戻りたくない日もあるのは分からなくもない。しかし・・・
「大徳利追加するから、な?」
「あらぁ!ほんとやったぁ!秀さんも一晩くらい泊めたげなさいよぉ」
 耳ざとく聞きつけた加代までが、開け放した戸口から嘴(くちばし)を突っ込んできた。
「ちょうど買ってきた干物があるわよ〜」
「っっ!!どいつもこいつもなんでうちに集まって来やがんだ〜〜!!」

 その夜。裏の若手三人組は年長組の悪口を肴に飲み明かし、家出猫はちゃっかり秀の隣で朝を迎えたのだった――――。



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