この回ふつうに観てたら萌えの大渋滞が起きて大変なことに・・・。 忘れないうちにポイントを列挙しておこう。順不同です。


「それじゃおっかさんの匂いが消えねぇうちに帰ぇるか」
 居酒屋の酌婦をして家計を支える知り合いの女・おれんに代わり、 寂しくて母ちゃんの職場に来ちゃった坊を、「おじちゃんが送ってやろう」と慰める勇さん。 みょうに手慣れた子どもの扱いにドキドキ。 小さき者と一緒にいると、大人のいい男ぶりがことさら引き立ちますね(完全に子どもが引き立て役)。
 秀メイン回と違って人妻や未亡人や年増との絡みが多いのも、公式様による色男のイメージ戦略なんでしょうか? そりゃもう個人的には大歓迎っすが、 勇さんが「匂いが消えねぇうちに」とか言うとエロすぎるので、も少し自粛して頂きたいものです。
 それにしても、猫や女に限らずチビッコやワンコまでも瞬時に手なづけてしまうのは、 勇さんの強力無比なフ●ロモンのせいもありますよね。一度でいいから吸ってみてぇ・・・(妄想で昇天)

 加代の買ってきた西瓜の小ささにケチをつける秀。素直に礼が言えないからってそりゃねーわ。 それでいて食べた種を外に吐き飛ばす仕草ですら可愛いという、女子から見るとズルいとしか言いようのない天邪鬼です。

 勇次の居間での、加代と猫についての会話。クールガイならではの返答に逆に惚れてまうやろ! 夜に二人きりでいても色っぽい流れにならないのは、その気がないからでしょう(勇次に)。

 加代を訪ねてきた怪しい手代を尾けていった秀を、暗がりから肩ポンしてドッキリさせる三味線屋。 その後しばし無言で見つめ合うふたり。息を詰めてる気配。アノ夜(11話)を思い出してるのか?

 河原に全員集合しての相談シーン。狙われてるんなら家に戻らず三味線屋に泊めて貰えと八丁堀に言われる加代と、 それをかわす勇次の軽口。なぜか秀も尻馬にのって割り込んでくるコミカルなシーンですが、 妙に結託してすかさず笑いに持ち込もう(誤魔化そう)とするふたりのテンションの高さ、不自然と思いませんか? 『泊り』という言葉に揃って過剰反応してるのを、意外に鋭い八丁堀には「んっ」と気づかれてそう。

 蕎麦屋で自分の顔の高さを超える盛りそばの重に嬉々として挑む秀!いや〜ここ登場から笑った。 可愛イケメン×痩せの大食いという、萌え属性(受け属性!)の組み合わせを思いついた脚本の方、有能すぎる。 見慣れた光景なのか、気にせず仕事の話を進める後ろの八丁堀との『どつき愛』までセットでほっこりしました。

 阿片窟になってる屋敷の庭先に身軽に舞い降りる秀、続いて背後から“ふんチラ”させて飛び降りて来る勇次! 初のふたり潜入捜査。「ついてこい」と秀が言ったと思われるリード感が出ててカッコいい。

 敵地に乗り込むため囮になってみると言い出した加代を、本気で止める秀。 「気を付けろよ」と心からの声をかけ、あべこべに加代にからかわれても真顔のまま。 なぜか仕事用の簪を掴んだまま自宅の押し入れ越しに会話する秀の、 任せるしかないと分かってて葛藤してる様子が切ない(可愛い)。

 端唄稽古中の中村家へ、屋根から逆さまになって顔を出し八丁堀を呼び出す忍者秀(笑)。 ついに出た「バケモノ?」発言!!対して「二匹」と冷静に答える主水もこの非常時に余裕さえ漂わせるツーカーぶり。

 阿片窟で息絶えたおれんを腕に抱えたまま、秀と言い知れぬ視線を合わせる勇さんの凄艶さよ・・・。 裏の出動時、とある軒先に置き忘れされていた紅い風車を手に取り、そっと吹いてみます。
 そして仕事の後に残された弔いの風車だけが、誰もいない夜の風にくるくる回る。 秀のずぶ濡れ仕事(DV男への怒り炸裂)との静と動のコントラストが印象的な演出でした。

 前回のお泊りから急速に絡みだした錺師と三味線屋、どうゆうことだ!!? 公式様の匂わせ疑惑はもはや『確信犯』と認定してよろしいかと。ありがたやありがたや・・・。
 萌えとは別に感想、おれん役の女優さんがエロ綺麗で演技も真に迫って良かったのと、 仕事の頼み料の出どころのオチが面白かったです。
 それと今回にて鬼瓦上司・内山様のご退場が、個人的に寂しいです。 左遷の主な理由が、無能な部下を育てられなかったからというのであれば、「あなたのせいじゃない」と言って慰めたい。
 ともあれ内山様、お疲れ様でした。八王子は江戸市中よりもずっと空気も水や食べ物もおいしいし(りつ談)、 打てども響かない馬面と顔を合わさずに暮らせるので、戻って来る頃にはきっと胃薬要らなくなってますよ!

 ここからこじつけ習作です。


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 加代は鼻歌混じりに闊歩していた。
 八百屋で御使いものにするのに傷があるなどと難癖つけて値切り倒した甲斐あって、 先日秀にケチと言われた西瓜の倍近い大きさがある。いい買物だったと満足する反面、 なんであたしがこんな差し入れなんか、とも思う。
 江戸の暗部に蔓延する阿片の運び役として、酌婦おれんの代わりになんでも屋を営む自分が目を付けられただけのこと。 女なら町方の目を誤魔化せるというのが、阿片を裏で仕入れて捌いていたヤクザ・竜神の伝兵衛側の理由らしい。
 世間に寄る辺ない女を利用した挙句に、邪魔になれば阿片で中毒死させる手口の卑劣さは、 己の身を張って日々懸命に生きている同じ女として、全くもって許せるものではない。 たとえ殺されたって、と囮を申し出た時の決意は本物だ。
 秀は血相変えて止めようとしたが、それを黙って眺めているだけの勇次と焚き付けるかのような事を言ってきた八丁堀の手前、 情報屋としての意地をみせねば、それこそ女一匹渡世の名が廃る。
 風鈴の揺れるとある蕎麦屋の外を通りかかったとき、
(おや?)
加代の足が止まりかける。
 見れば前が見えないほど積み上げた蕎麦の重をせっせと啜り込む錺職人。 それだけならすぐ声をかけるところだが、躊躇したのには訳がある。
 背中合わせに座るのは、この蒸し暑さのなかでさえいつもながら汗の気配も感じさせない色男。 三味線の包みを脇に立て掛け、自分は大盛り一枚をたぐりながら薄く笑みを浮かべて何か言っている。
 対して秀は笑顔こそ見せないまでも、何やら負けじと言い返して邪険な様子は感じられない。 いつの間にふたりの仲がここまで接近していたのか・・・。
(何さ。男同士でいちゃついちゃって)
 いちゃつくという言葉にはさすがに当たらないかと思い直したものの、心のもやもやは確かにここにある。 最近の秀はちょっと雰囲気が変わった。どこがどうとも言えないが、 暗く沈むことの多かった目に、時折生き生きとした輝きが冴える。好敵手が現れると、これ程男は変わるものだろうか。
 どうも入り込めない雰囲気を感じてそのまま行き過ぎた。何だかんだと秀も勇次も、女の自分には甘い。 分かっちゃいるが妬けてくる。
「何さ。あたしの方が長いつき合いなのに・・・」
 やっぱり西瓜は一人で食べちまおう。よいしょと声に出して重い西瓜を抱え直した。



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