必殺では、時代を反映する社会現象や問題を題材にとることも多々ありますが、今回は『お受験』。
 八丁堀同心として命を落とした夫とは違う生き方をさせたいと願う母の期待と献身に、かえって苦しむ若者。 母である美人の後家さんにほの字で、進んで息子の見守りを買って出てやる気をみせる八丁堀。男心の純情と行動が可笑しくもいじらしい。
 八丁堀が息子に説教垂れる言葉も後家さんへのフォローも、生きてゆくだけで精一杯の市井の人々の実情を知る、大人のいい男感が溢れています。 いつもだるそうな八丁堀が生き生きと動いているのも新鮮でいいものですなぁ。
 八丁堀が岡惚れした後家の息子が通わされている私塾は、主に高級官僚の子弟が通うところ。 身分の低さをネタにいじめられたりと何かと肩身の狭い息子は、母に隠れてサボりがちになってました。 さて、そこの生徒二人があるとき大変な事件を起こしてしまいます。
 欲求不満で通りすがりの町娘を物陰に引きずり込むも、抵抗され誤って死なせてしまった。とんでもねぇ。 それを知った親と先生が共謀して揉み消そうとします。とんでもねぇなオイ!!
 残された半狂乱の母親(職業は安女郎)に秀は深く同情するが、加代は同時にそれが裏の仕事にならないかと目論む。 そんなことを言いだす加代に、「こんな時によせよ!」と不謹慎さをきつくたしなめる秀が優しい! 仲間内で一番生真面目でピュアなのはやっぱり秀なんですねっと、と公式に心で確認取りました。

 加代が定期的に勇次から目を離さずにいるのが面白いです。たんに色男にちょいと岡惚れってだけではなくて。
 と言いつつ、毎回秀になんやかやと訴えてますが。 これによりますます秀の三味線野郎に対する反感と競争心が否応なく高まるはず。まさか加代、計算ずくか!?
 情報屋っていうのは、常日頃から仲間内であってもなにか異変がないかつけ入る隙はないかと目を配っているのが、 仕事を掴む(作る)コツなのかもしれませんね。 誰にうざがられようがつれなくされようが、まったくめげない加代のペースに、 結局は仲間の野郎三人がまんまと引きこまれ動かされてしまう。そんな加代の情報屋としての剛腕ぶりが随所に発揮されます。
 しかしいくら仕事のためとは言え、恋に真っすぐな?八丁堀の目を覚まさせるべく(笑)、 後家が塾の先生に息子の為に身を任せている証拠を見せようとするあたり、普通にひどくないか・・・。 新・必殺冒頭で、仕事人から足抜けして大店の入り婿になると言い出した秀を悪魔の囁きで阻止したように、絶対に夢を見させてくれない鋼の女。 仲間内で一番のリアリストはやっぱり加代なんですねっと、と公式に(以下略)。
 勇次も勇次でしっかり加代のオーダー通り、中村家で ″釣り″ ネタを披露。 後家の息子が通う私塾なだけに、今回の疑惑には必死で関わろうとしなかった八丁堀ですが、 自分の密かな恋が仲間内で共有されてることをそこで知る(酷い)。 かくして無理やり若手三人組によって、女郎の仇討ち仕事に引っぱり出されることになりました〜ww

 とりあえず三味線屋に怒鳴りこんでみれば、秀も加代もそこに隠れていたのには私が笑った!なんだよ、全員集合かよ!
 しかしなんなんですか、この絵になる画面は・・・。ため息と鼻息がさっきから交互に漏れてるんですが。 居間で秀と勇次が一緒にいるだけで、何だか直視するのがためらわれるようなあやうい雰囲気が漂うのは、 我が老眼の近視ゆえというだけではよもやありますまいっ。
 隙あらばむだにイキってみせる秀が、さっそく襖に背中を預けて横柄なポージング。 手を膝の上で組んだり立膝したり腕組みしたり、とにかく話のあいだ落ち着きがない。 そして長火鉢に寄りかかって(片袖まくってるのが鯔背でカッコよ!)そっぽ向きながら八に対して開き直る勇次のことを、 いつものむやみやたらな敵視ではない生ぬる〜い目つき(同じ穴のムジナ的な)でチラ見しております。
 ただし勇次がこっち見てないときにしか見ない、こっ…このツンデレ!!無自覚の波状攻撃が目と心臓に悪いわ! 少なくともこれまでの回では三味線屋と直接会うのを避けて来た感のある秀が、同じ部屋に普通にいること自体、進歩ですよね〜(^O^) 「秀は冷てぇし」と作中聞き捨てならないいじけ名句を吐いた勇さんにしてみれば、内心かなり嬉しかったはず! 加代がもしかしたら、その時のセリフをそっくり秀に告げ口してたかもと想像すると、 それ聞いた直後の秀のリアクションや表情が気になりますな。グフフ・・・(危険)

 妄想の独り歩きはさておき。女郎への同情ゆえの臨時協定とはいえ、 つれない秀がちょっと歩み寄りをみせたことで、勇次も気を良くしたのか?
「誰かさんの(恋の)かたきもついでにとってやるか(にやり)」
なんつー気障な一言で仕事を受諾。急にチーム感が出て来てなんとも言えず嬉しい場面でした。やったー!
 自分たちの利権の為にはひとをひととも思わぬ所業の標的(まと)たちに、一切の斟酌は不要。 八丁堀が珍しく正攻法で証拠をつかみ、先生を膝つめで尋問するところがカッコいい。 コロンボと違うのは罪を暴くのではなく、犯罪者の始末が最終目的というところですね。 犠牲になった二組の母子は、本当に何も救われずかわいそうでしたが・・・(合掌)。
 主水のテーマ曲『月が笑ってらぁ』がずっと背景に流れておりました。 不倫とも違う、まさに男心の繊細さ哀愁が優しい余韻。さすが、はぐれ刑●純情派!よかったよぉ〜!



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