「お父様?美鈴、お父様にお聞きしたいことがあります」
「ん?何だろうな。父に答えられることかな?」
「あのね、この世で一番きれいなものって、何ですか?」
「一番きれいなもの・・・?うーん、そうだなぁ・・・。(空を見上げて)たとえば、あの花火」
「(嬉しそうに)はい!」
「それから、この間の蛍。母上も一緒に見に行ったろう」
「はい!あれもとてもきれいでした!他には?」
「他には・・・(と言いながら隣をチラ見。秀も家の外で夕涼みしながら空を眺めている)」
「お父様?どうかしましたか?」
「(ハッ)い、いや何でもない。・・・そうだな、この世で一番きれいなものがもうひとつあった」
「えっ、何ですかそれは?」
「(微笑んで)それはね―――、涙。誰かのために流す涙だよ」
「・・・なみだ」
「覚えておきなさい、美鈴(頭を撫でる)」
「はい!」


お江戸のミニスカポリスにうっかり動揺しちまって、少しクールダウンしてからと思ってたが、 脳内のセルフトーキングが止まらねぇ!!
このままじゃ気が狂いそうな気がしてきたので、もう感想書く。 ですが決して、まともな感想は期待しないで下さいね(初めから誰もしてない件)。

無印・第九話『蛍火は地獄への案内か?』

完全ネタバレしております。あと、むちゃくちゃ長いです。お覚悟をm(_ _)m


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っああああ―――――!
 しょっぱなから語彙力崩壊!今回のメインディッシュは二つ!プリモピアット(一皿目)が秀のけしからんコスチューム。 そしてセコンド(二皿目)が、喜一郎と秀のはみ出し者同士の奇妙かつピュアすぎる友情でした。
 いかん、もうここで涙が滲んでしまう…キーを打つ手元が見えまっしぇえ――ン(大泣)ママ――!

「おれは殺しちゃいねぇよ、おっかさん・・・、殺しちゃいねぇ」
「分かってる・・・、分かってるよ、喜一郎!!」
 いきなりラスト近くのシーンからになりますが、今回のお話は、筋書きとしてはとてもシンプル。
 太物を扱う呉服の大店・伊勢屋の店先を伺うボロボロの身なりの若い男。 お使いに出て来た丁稚を呼び止め、奥様はどうしているかと尋ねる。
 丁稚の話では奥様が懐妊中とのこと。「違う、そうじゃなくて50過ぎた奥様だよ」とさらに問い詰めるも、 「そんな人いません」とにべもない返事。
 伊勢屋に後妻として入ったおひさだったが、先代がおひさの連れ子・喜一郎に殺されるという事件が起き、 伊勢屋を出て行ったまま行方知れずになっていた。おひさの事を訊ねていたのは、喜一郎本人。
 実は喜一郎は八丈島に島送りになっていたが、脱走して来たのだ。 というのも、自分が無実であることを母にだけは伝えたい一心で危険を承知で江戸に戻って来た。
 伊勢屋にもう母がいないと知り焦る喜一郎だが、食うや食わずで自分も疲労困憊。 人目をさけて夜の川べりへとやって来ると、そこには男がふわふわ飛び交う蛍を見ながらひとりきりで夕涼みをしている最中。
 物も言わずに背後に忍び寄り、刃を突き付けて強盗をしようとする喜一郎。 しかし!こいつが意外にも手ごわい相手だったからさあ大変。
 俊敏に向き直ったそいつが喜一郎のドスを手からもぎ落とし、殴りつける。

バキッ

 向き合って立ち上ったところをみれば、まだ超のつく若造だ。自分より背が高いじゃないの、痩せてるけど。 そこから宵闇のなかで無言の男同士の殴り合いが始まった。レディーゴゥッッ!!

ドカッ、バキッ、バキッ

 喜一郎もかなりの腕っぷしで殴りつけるが、声ひとつ上げない若造はぶっ倒れるどころか痛めつけてもすぐ起き上がってくる。 そのうち剥き出しの生足で、股が丸見えになっちまうくらい思い切り蹴り上げられちまったぜヘーイ!←
 気力がそこで萎えてしまった喜一郎、頑張って殴り返そうとするもことごとく肩透かし。 避け方の巧さ素早さもハンパねぇ、一体ぇ何もんなんだこいつは!?!
 ついに地べたに尻もちをついた喜一郎とほぼ同時に、そいつもまた疲れ果てたようにその場にへたり込んだ。 そうしながら今しがた自分が座っていた川べり辺りに目をやって言うには、
「おめぇのせいで、蛍がびっくりしてみんな逃げちまったじゃねーかよ」

チュド――――――――ン・・・・・・・・・(ハートに被弾)

 はい、ここで秀の『妖精説』が初浮上しました、私のなかで。
 なんなのこの生きもの、やだ、やっぱり妖精!?たった今までドカバキやりあってた相手にそんなことで文句言う? しかも強盗だろそいつ、刃物振り回してたんだよ?(心から心配)
 あっけにとられてる強盗(当然だろう)に、さらに続けるポエム妖精。
「ガキんときにおふくろと一緒にうんぬんかんぬん」
 すみません、ここらあたりのセリフがうろ覚えなんですが、秀の過去がさらっと開陳される実は重要なシーン。 子供の頃は幸せな時期もあったんですね・・・?(尚更切ない)
 その言葉に、強盗も張り詰めた心が緩んでしまう。実は喜一郎にも、蛍を母と見た優しい記憶があったのでした。 何で分かった秀?そうか、妖精だものな、人間じゃないからな。
 つまり普通の人間とは異なる感性で生きてるこの妖精の主義は、
『拳(こぶし)は嘘をつかないぜ!俺にはおめぇのことが良く分かるさ』
ってことですか。互角に殴り合った相手だからこそ、拳を通じてその熱きハートに共鳴し、悪人ではないと見切ったと。
 わぁ。久しぶりに見ちゃった、こんな青春。 突然ですが、ここで昭和のフォークグループ・青い三角定規の名曲『太陽がくれた季節』の一節を引用します!

 〜〜 ♪君は何を今 見つめているの 若い悲しみに 濡れたひとみで 逃げてゆく白い鳩 それとも愛〜♪

 今回作を見ていてふと浮かんだのですが、この歌詞ってまんま秀だわ〜。 秀のテーマといっても過言ではないイメージにぴったりの歌だわ。そう思いませんか?(真顔)

――――すみませんまた脱線しました。
 ともかく、蛍の妖精は「おめぇなんにも食ってねぇんだろ?待ってろ」などと喜一郎の同意も得ずに飛び出してゆくと、 瞬く間に握り飯を調達してきます。
 戸惑いつつも秀のペースに半分呑まれてしまってる喜一郎。 いや、ボロを着てる喜一郎に勝るとも劣らない半裸状態の極短単衣のせいで、気もそぞろなのかも判りませんが。
 喧嘩の最中に喜一郎の二の腕に入った罪人を示す刺青を見てすら、こんな風によくしてくれる謎の若造。 喜一郎とて伊達に?島送りになった男じゃないので、その後も自分に付きまといピンチを助けてくれる秀を、 堅気じゃないと睨んで問い詰めます。
「おれより若いくせに色んな修羅場くぐって来たような目をしてやがる」
 鋭い(ここのセリフもまたうろ覚えでごめんなすって)。しかし秀は自分のことを簪を作ってるとだけ説明します。
「簪?」
「ああ。女が髪にちゃらちゃらつけてるやつだ」
 ああああ――――ここでまた場外レベルの発言だぁ――!! 自分より年上でしかも江戸生まれ江戸育ちの男に、簪とはどういうものかをドヤる・・・。
 天使ですか?無垢なの、疑うことを知らないのね?秀の『天使説』もあらたに浮上。

 はあはあ。この二人の友情?をはらはらしながら見届けているだけでこの回は過ぎてゆきました。って、まだ前半だぞ。
 噂で母が夜鷹になっているのではと危ぶみ、河岸で母を探し回る最中、八丈からの脱走犯を探す町方たちに追われる喜一郎。 自ら川に飛び込み危機を脱するも、手負いでとある舟宿の下に流れ着きます。そこは、おとわの部屋の真下。
 おとわは訳ありらしい喜一郎を自分の部屋に匿うと、町方からの目を誤魔化してくれる。 それだけでなく甲斐甲斐しく看病までしてくれるのです。
 喜一郎は、図らずも謎のふたりの人間から思いもよらぬ親切を受けるわけですが、 自分は脱走犯でしかも人殺しの詮議をかけられた罪人という負い目もあってか、自ら姿を消してしまう。
 おとわもまた、喜一郎に深く隠した悲しみの色を感じて、八丁堀に話を持ち掛けるんですが、今回の主水はやや荒れております。 金や自分の手柄になる話ばっかりしてるし、酔って「鹿蔵のおやじもどっかで野垂れ死んでるといい」などとおとわに暴言を吐く始末。
 いやなおっさんやなぁ。秀が食って掛かるのも無理ないわ。 あたかもゴミを見るよーな目つきで主水に吐き捨てる、天使の荒ぶる気持ちが分からなくもありません。
 が、役人としての手柄が独り占め出来ないとなると、裏の仕事で銭になるならそっちに加担するという日和見の世渡り上手は、 最終的には依頼を引き受けるのでした。

 蓋をあけて見れば、諸悪は身内の中にいたんですね。 伊勢屋の現在の主人・駒造(元番頭なのか?よく事情が分からなかった)が、先代を仲間の手代らと結託して殺害。
 何やら先代がDV気質だったらしく、当時の妻のおひさを折檻しているのを、見かねた喜一郎が割って入ります。 そのとき「殺してやる!」と叫んで揉みあったところを巧く駒造らに利用され、 自分は殴っただけなのに殺害した犯人とされてしまう。 実際には、おひさ親子に罪をかぶせて追い落とすべく、駒造たちがやったのでした。
 おひさも喜一郎もそれを知っていたけれど、結局は無実の罪を晴らす機会などなく。 当時は犯罪が起きても調査とか証拠をすべて洗い出すってことは不可能で、 こうやって悪い奴らの仕組んだ罠によって無実の罪を着せられて、 島送りやら獄門送りになる人たちも少なくなかったんじゃないでしょうか。
 結局は力のあるものが勝つ。 だからこそ仕事人のような存在が、晴らせぬ恨みを晴らす裏稼業にニーズがあるのも頷けますが、 むなしいですな、なんだか・・・。

 それはそうと、陰ながら喜一郎を見守る秀。昼間おおやけには動けない喜一郎に代わって、 おひさを探し出し(ほんとはあのミニスカも真っ昼間はまずいのでは←まだ言うか)、喜一郎が帰っていることを教えてあげる。
 離れ離れの母子は、闇に紛れて例の秀たちが出会った蛍の岸辺に互いを探してやって来る。 しかし、そこをまた悪人たちに利用され、喜一郎は事の真相が露見する前に殺されてしまうのです―――。

 このときに流す秀のひとしずくの涙!片目だけ!!
 あ、ぁ、ぁ・・・あまりに尊すぎる。 理不尽さへの激しい怒りと深い悲しみが過ぎて、かえって表情が欠落したうえでのこの涙は、 秀の溢れてあまり有る心情を物語るようでした。素晴らしい演出に感謝、中のひとの妙(たえ)なる演技にも感謝。
 誰かを想って流す涙は、見る者の心の奥をも癒すのですね、ありがとう秀天使!!

 おひさが喜一郎の無実と伊勢屋の陰謀を訴えた手紙と共に、 仕事の頼み料(銅貨ばかりなのが一層哀れ)を秀に託して後追い自殺。
 さて今回、左門は家族サービスシーンが中心なのですが、 そんな間隙を縫ってさえ要所要所でのナイスアシスト、もうすっかりプロの仕事人であります。 なんだかんだと、雑魚ながら三匹まとめて瞬殺する左門の仕事量が一番多いという。
 川開きの日に花火や人々の賑わいのなかでという仕事シーンがまた見どころ多しでした! 舟遊びで行き交う屋形船に乗じて、客の座持ちとして自らも船に乗っているおとわ。その船べりに掴まり、水の中に潜む秀。 伊勢屋の乗った船とすれ違う瞬間、秀の道具の切っ先が鋭い閃光を放つ!
 仕事を終え、岸からその様子を見ている八丁堀。 おとわがその視線を捉え、三味線を弾きながら嫣然と笑みを浮かべて川面を流れてゆくシーン。
 あたかも『ほらご覧』といったような、狙った獲物を仕事にかけ、思いを果たして満足そうな浮世絵的美貌が、 背筋がぞくぞくするような凄みを湛えていました。さすが元締。器のデカさが、情の強(こわ)さがケチな小役人とは違います。
 秀とおとわが喜一郎のことで会話するような場面は一度もありませんでしたが、 秀の気持ちをきっと元締は理解してくれていたのではないでしょうか。

 ということで、シャレにならんほどに長くなりましたが、前半部の妖精説にむだに字数を使い過ぎてしまったせいですね。 はい、そこが一番言いたかったことでした。
 あのキラキラ喧嘩シーン(とその後のやりとり)は我が心の名場面集に永久録画保存されました。 ああ、何度だって再生するさ!秀のテーマ曲と共に!飛ぉーび込もう、青春の海へ〜♪
 フェアリーでもエンジェルでもターザン(?)でもいい!とにかく秀は美しい、いや脚と顔だけでなく心の底までも!! いや〜、いいものを魅せて頂きまして、ありがとうございます。(画面に向けて深々とおじぎ)

 そして文中、前触れなく「昭和ネタ」がカットインされ、 平成生まれ、令和生まれ(これはないか)の方々には大変ドン引…戸惑われたであろうことをお詫びします。 おそらく今後もこうした放送事故は起き得るかと思われますが、広いお心でスルーして下さると幸いです。



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