冒頭から元締めに説教を喰らっている秀。 「女だからって舐めるんじゃないよ」 態度の悪さをきつく〆られております。鹿蔵さんには口ごたえなり不貞腐れるなりしてたくせに、 おとわさんには「・・・分かった」と神妙な秀(きゃわいい)。 前回初登場のおとわに「まぬけ」認定された主水、今回もまた「一人で無理ならあのまぬけにも」と言われてました。 後日おとわを訪ねた際、「まぬけが来ました〜」と自分で言って当てこすりしてたけど、 これは秀が告げ口したって事ですよね(主水に八つ当たり)。 鹿蔵の去った後、なんとなくグダグダしてる男どもの引き締めにかかる極妻感にスカッとします。 ということで、今回は全員参加の初仕事。元締めはどんな仕事を選ぶのでしょうか―――。 ******************************************** ある日船宿の元締めに呼ばれた主水、出入口ですれ違った女の腰つきを振り返り「イイ女だ・・・」と呟きます。 これみよがしな色気女の正体は、主水の同僚である嶋村頼母の妾・お種でした。 おとわさんを介して仕事人に嶋村の始末を依頼しに来たのです。いったいどういうこと? 嶋村は、主水とほぼ変わらない地位の下役人にすぎないが、要領よく立ち回る野心家。ある時外回りの最中、 とある大店から謝礼という名の多額の口留め料をせしめることに成功。その金で囲ったのがお種でした。 お種は嶋村に、自分を正妻にしてと執拗にせがみます。武家育ちの従順で貞淑な妻にとっくに飽きがきていた嶋村はその気になり、 正妻の藤女を亡き者にしようと企てるのでした。 金で懐柔した悪徳医師・良益と共謀し、妻の持病の薬に毒を混ぜて服用させるという作戦。 えっ…何か理由をこじつけての三行半じゃ駄目なの? 子どもがいないことを理由にするなど、もっと穏便に別れる方法はいくらでもあるように思うのですが、 それだと話が始まらぬ。 さあ、日頃から冷淡極まりなかった夫が、毒消しだからと言ってわざわざ薬を貰って来てくれるようになりました。 断れず夫の目の前で服用する妻。藤女は夫が妾を囲ったことに気づいています。夫が自分を邪魔だと思っていることにも。 そして彼女はある結論を下すのでした。すなわち、殺られる前に殺る!(Koeeeeeeeeeeee) 夜鷹がたむろする河岸に、舟に乗った三味線弾きが姿を見せる時があります。 それが仕事人ではないかと噂で知った藤女は、夫が妾宅に泊まって帰らない夜に夜鷹に扮して河岸に立ち始めました。 ものすごい思い切ったことをしますね、藤女さん・・・。大人しい女ほどキレたらコワいの見本。 元締めはすでに、場慣れしていないその女の事をマークしていて、女の身元を探るようにと仕事人たちに命じていました。 河岸に探りにやって来たのは左門。件の女が、買おうと言い寄ってくる男を必死でかわしつつも誰かを探している、 危なっかしい様子を目の当たりにします。もちろん止めに入るわけにはいかないので、木陰でやきもきしながら見守る左門でした。 武家の妻が、夫殺しの依頼のために河岸で身を売るとは。 どう見ても世間ずれしていない女のどこに、そんな異様な執念が潜んでいたのか。 探索を終えて自宅へ戻った左門を迎えるのは、愛妻・涼。「おかえりなさいませ」と三つ指ついて出迎える妻を見下ろす左門の、 複雑な表情。「どうかしましたか?」と不思議そうに訊かれて「いや、何でもない」、気を取り直したように微笑みます。 涼のような聡明な女でも、動機があれば心の掛け違いが起きないとも限らないのだろうか。女とは永遠の謎よのう…左門。 すべてを胸中に収め、愛娘の寝顔にしみじみと眺めいるパパでした。 ところで畷家の前に、すばらしいシーンがカットインされていました! 長屋に帰って来た左門を見つけて、家の外で待ってた裏の仲間がスッと脇から現れる。俯き加減にいきなり謝る秀。 「すみません、俺、ああいうところ苦手で・・・」 わああああ!いつものシラケ顔と打って変わってのしおらしさ!しかもとても恥ずかしそう! ああいうところ、ってね、ああいうところですよ。はっきり言わない秀が愛くるしい(;゚∀゚)=3 河岸探索を意図的に(←ここ重要)逃げて、左門に丸投げしたんですな。 (珍しく)素直に謝られ、ただ微笑んでやる左門ニキ。誠実で頼もしい大人の対応がたまらんです。 秀のちょっと照れくさそうな「左門さん」呼びにも萌えるんですが、表では左門も『秀さん』って呼んでるのが妙にドキドキします。 お隣さんだからとうっかり呼び捨てして怪しまれないよう、日頃から気をつけてるのかも知れませんね。 そうそう、今回もあざとエロい半裸姿で井戸端で洗濯中の秀と、 ワンワンと鳴き真似で合図する八丁堀のラブリーな掛け合いシーンも忘れちゃならねぇ! 二話目では自分から頼みこんで仕事人に復帰したくせに、今となっては無理やり引き込まれたと言いたげな迷惑顔。 塩対応で精一杯反発するのに、ポスッと頭に手を置かれてたりして何やっても可愛いだけってことですか(パァァ…)。 ハッ、脱線しました。 さて、うつろな表情ながら何かを奥底に秘めている、ミステリアスな藤女の表情、行動。 ゆらゆらと揺れる安定しない女の心は、触れさえしなければぎりぎり道を踏み外すことはない。 しかし夫のつれなさにこれまで耐えてきたのは、まだどこかで信じていたからでした。 せめぎ合う胸のうちに身悶えする吉行和子の熱演(かなりエロい)がすばらしい。いいぞもっとやれ! もはや正気を失くすかどうかという瀬戸際の折も折、妾のお種が屋敷に押しかけてきました。 なかなか進展しない状況に焦れ、正妻に直談判。 「あんたが死んでくれなきゃ、あたしとの約束をあの人は守れないよね。そうすると殺すしかないじゃない? そんなの嫌でしょ、あんたも・・・」 過呼吸気味(桃井かおり風)に脅迫してくるお種も、かなりのヤンデレのようですね。嶋村のどこがそんなに良いのか。 あ、ちなみにこの時点でも嶋村は、妻と妾両方から殺意を抱かれてると気づいてない模様。ホントに武士か? 藤女は追い返すこともせず言われっぱなしでしたが、 女が帰った後、夫が自分のために医者から貰ってきた薬を井戸に投げ入れます。ついに踏み外してしまった・・・。 そして向かった先は医者宅。「あのお薬は効き目が悪いから、もっと強い毒消しを――」と、みずから良益に頼み込むのです。 自分の為のさらに強力な毒薬が作られるのを待つ間、畳の上を歩いていた小さな蟻を指先で擦り潰すシーンに鳥肌が立ちました。 しだいに夜叉化してゆく藤女の様子を、仕事人たちが三人三様色んな場面で見届けることになります。 藤女の依頼を受けるか否か。腐っていても八丁堀同心ひとりを消すってことは、バレたら全員の破滅に繋がるハイリスクな仕事。 最終的に決めるのは、もちろん元締です。三人の報告を聞きつつ充分に吟味した上で、おとわはついに藤女の前に姿を現すのでした。 舟宿に呼ばれた仕事人三人の前に、頼み料の小判が置かれます。 ここで冒頭シーンを振り返ると、秀は叱られてる時も足投げ出して態度悪かったのですが、ここではきちっと正座・・・出来たんだ。 おすわりするのはエサを貰う時だけという。 標的(まと)は外道医者の良益、情婦お種、そして諸悪の根源の嶋村頼母の三人。 藤女の苦しみにそれぞれが思いを馳せているように感じられる仕事シーンは、見どころ満載でした。 「妻の肝の薬を貰いに来た」という口実で医師を訪ねた左門、 良益を追い詰めるきっぱりとした口調にもすでに殺気が漲っていて、深い怒りを感じました。切れ味冴え渡る一刀両断カコイイ!! お種の担当は秀。錺職人の仕事シーンばかり集めた動画を作るとしたら、この回は私的に絶対に外せないですね。 嶋村からの伝言を伝えに妾宅を訪ねた下男と見せかけて、女の色仕掛けに乗ります。 使いが可愛イケメンと見て目の色変えるとこ好き。 寝所では障子ごしの逆光を用いた演出が艶めかしく美しいだけでなく、 いつもは【動】な秀の【静】の殺しの鮮やかさがひときわ印象に残りました(伝われ)。 もはやお約束のサービス半裸シーン、暗がりで女の手でするりと半纏を脱がされる、お布団待機中の秀!ノー腹掛け!! あらわになった無防備TKB――――ギャオス!!! ちなみにこのありがたすぎる名シーンを強引に勇秀アフターお清めに繋げたのが、拙作『ジャッカルの夜』でした。 そして真打ちの仕事は・・・。 世間話を装い、夜鷹でいい女がいると嶋村を誘い出す主水。 「上品さがめちゃくちゃにしてやりたくなる」という程の女が細君にそっくりと聞かされ、共に件の河岸へGO。 誘い方の癖が強くてこっちまで恥ずかしくなったぞ、主水。 かくして首を商売用に真っ白く塗った藤女と対面します。自分に見られて驚きもしない妻に、おめでたい嶋村もようやく事を把握したようです。 昼行燈の顔を脱ぎ捨てた主水と斬り結ぶも、大した勝負にもならず白刃の下に斬り伏せられます。 おとわの後ろに居て夫の最期を見届けた女は、(想像通り)貰ってきた毒を自ら呷るのでした。 驚く主水と、分かっていたようなおとわの反応が対照的。 藤女はよろめきながら、横たわる夫の胸の上に寄り添って息絶えたのです。 うーん、殺しを依頼すると決めた最初っから、藤女はこんな形での心中を想定していたのかも知れない。 夫だけを見つめてきた藤女は、嶋村の欲望に対する弱さや色々残念なところも熟知していたことでしょう。 それでも黙って仕えてきたが、身に過ぎた野心を追及するあまり人としてのタブーに踏み込んでしまった。 もう目が覚めることはないだろうと見切った時に、夫を殺そうと決めたかもしれないが、 もしかするとそれは憎しみではなく愚かな男への憐みだったかも知れません。 これ以上の罪を犯さないよう、私があなたを殺して差し上げます。その代わり、私も一緒に逝きましょう―――。 真相は藪の中。タイトル通り、可愛い女の胸の中。死に際の安らいだ表情を見てそんなふうに感じました。 今回もきっちりネタバレしてしまいました。 ここまできたら仕上げの総括いきます。 すべてが終わったところで、おとわが「男はまぬけな方がいいんだよ」って誰に言うともなしに呟くシーン。 これがグッとラストシーンを粋に締めくくってますね! 結局おとわさん、なんだかんだと八丁堀のことを認めて(やって)るってことですかい。 それと。さりげなーくだけど、まぬけじゃない誰かさんのことを暗に揶揄しているようなセリフにも思えたのは、ちと考えすぎでしょうか。 鹿蔵さん、たしかに抜け目がない賢しい男。こっちは超大物ですけど。笑 それでは長々とおつき合い頂きありがとうございました。 ★ 妄言ノ間「目次」に戻る
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