うずまさ学園高等部 詰め







『幼馴染の同級生同士』


● 未成年の主張! ●


 村上秀夫(高一)はグラウンドに設営されたひときわ高い壇上に立っている。眼下には生徒たちがひしめいていた。
 秋の文化祭での『未成年の主張』と題したイベントにおいて、周囲には何も言わずにエントリーしていた秀夫が、 いったい何の主張を訴えようというのか。級友たちは期待して見守っているのだった。
 そこにはもちろん、彼の一番親しい友人である山田勇次の姿もあった――――。


「(深呼吸)・・・実をいうと僕は、入学して半年で二回もフラれました」

(笑い声と共にがんばれ!ドンマイ!!などと掛け声が飛ぶ)

「恋愛に疲れた僕に、小学校からの親友である勇次は、優しくこう言って励ましてくれました。 『落ち込むなよ秀夫!オレたちにいま必要なのは、W愛情WよりW友情Wだろ』と」

(ザワザワ・・・。皆んなの注目を浴びた山田は俯いて聞いている)

「(深呼吸)でも!最近僕は特ダネを入手したんです」

(なにー?と女子たちからのコール)

「それは。・・・昨日のメイドコンテストで優勝した三組の竜子ちゃんが、勇次に告ったって――――!!!」

(うおおお――――!!と歓声。勇次、相変わらず下を向いたまま)

「(一際大きく息を吸って)W愛情WとW友情W、どっち取るんだテメ――――――――!!!」

(生徒たち爆笑。周りから肘で突かれた勇次が、そこでやっと顔を上げて壇上を見上げると、すかさず叫び返す)

「W愛情Wに決まってんだろ―――――――!!!」

(大爆笑。睨み合うふたり以外の皆んなが悶えているうちに、秀夫が黒目がちの瞳をフッと逸らす)

「そんなのわかってたよ・・・!でも、良かったな!!おーめーでーと――――!」

(パラパラと拍手が湧く)

「なんて、誰が言うかバア―――――カ!!!!この裏切り者が――――――――!!!!」

(男子たちから雄叫びのような賛同の歓声が起こる)

「彼女出来たときの予行練習っって、俺に何回もキ●したの返せ――――――――――――!!!!!!!」

(一瞬水を打った静けさののち。もはや爆発に近い絶叫が上がる。 興奮しすぎてパニックを極めた生徒たちに向け、ペコリと90度に曲がる礼をした秀夫は脱兎のごとく逃げ出した!)

「バカはどっちだ!!!!いいかげん気づけや!!!!!」

 真っ先に我に返り、わめいてから猛然と後を追って駆け出したもう一人の未成年の主張に、 全校生徒だけでなくなぜか一部の女性教師たちからまでも、熱烈な大声援が送られるのだった・・・・・







● 続・未成年の主張! ●


「緊急アナウンス!えー、たったいまエントリー外から飛び入り参加させろという男子が押しかけて来ました。 許可するかどうか今・・・って、あ、えっ?ちょっと!?勝手にもう登壇しちゃってるしっ!!」

 場の興奮も冷めやらぬうち、主催の放送部の制止を振り切り凸ってきたサッカー部エースの乱入に、 ファンの女子たちからは黄色い悲鳴が上がった。

「(何度も肩で深呼吸して)りゅ・・・竜子ぉ!!!お前もいま聞いたとおりだ!!! 山田のことはあきらめて――――今度こそ俺と!!!つ、、、付き合ってくれ!!!!好きだあ!!! このとーり、お願いしまっっす!!!!!!(ザシャァッ←土下座)」

 花屋敷政人が九十九財閥令嬢の竜子と幼馴染であることは周知されている。 気高いお嬢のボディガードをかって出ては、パッカードで送迎するSSらにかえって警戒される光景も日常化していたが、 よもやの公開告白に、ギャー!!ヤバあい!!!!と大歓声で飛び跳ねる生徒たち。

「コ、コレは――――!? さ…さすがは我が校の誇るストライカーの面目躍如です!! 巻き返しの攻撃力と得点能力の高いシュートに定評あるプレイヤーが、混乱のどさくさに紛れてきたぁっ!! こぼれ球のチャンスはあるのか――――――――!!!?」

 放送部も便乗して大盛り上がりを見せたが、ゴスロリを着たハーレイ・クインと恐れ憧れられている武闘派の竜子から、 金属バットで政人が追い回されているところが後々目撃されたそうだ。

 かくして文化祭を機に、あらたな(珍)カップルが二組、うずまさ学園高等部に誕生したのだった。


「あー、腹へった。B定にカレーな」
「あら、中村さんおつかれ、今日は早いね」
「ガキどもが校庭で大騒ぎでよお。ったく、やかましくって花壇の手入れも出来やしねーから逃げてきたよ」
「まーねー。『未成年の主張』人気だしね。さっきちょっと見に行ってみたけど、若いってやっぱりイイわねぇ(ぽわーん)。 あたしの青春もまさに同じだったわぁ・・・」
「あんたにあんな可愛い時代があったのか?加代ちゃん(笑)」
「は?しっつれいね!!!学食の "おねえさん" にだってね、キュンとする恋バナのふたつみっつは・・・」
「キュンとするレモンも忘れずに付けてくれな。唐揚げにはレモン派なんだよオレ」
「ふんっ!用務員のおっさんが気取るんじゃないっての!!」





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大声援ありがとうございました(笑)





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