893×刑事 詰め







仕事で関わったある極道と恋におちてしまった熱血刑事という設定の勇秀パロディ。
現在は足を洗い主夫になった元893・勇次との同居(棲)の日々を、 甘く緩くぐだぐだと書き綴るシリーズです。 元々は秀中さんの某刑事ドラマのパロディとして書いていましたが、 公式様との齟齬がありすぎるため、オリジナル設定の話として焼き直しました。
学パロと同様、また何かネタが思いついたら増えるかもしれません。そのときにはお知らせしますね。


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● 今日は早めに帰ります ●

 恋は


「アレ、今日は早上がりかヒデ?めずらしー」
「は、すんません…。あの。明日俺、休み貰います」
「おう了解。お疲れ」
「ゆっくり休めよー、ヒデ」
「はい。…じゃお先に」

 小さくはにかんだように笑い、部屋を出る背を見送って。
「―――なあ。あいつなんか…最近変わったと思わんか?」
「ですね。うち来た頃の刺々しさがちょっと柔らいだってゆうか」
「前はどんだけ言ってもガン無視だったのに、ときたま休みとるようになったしなぁ…」
「(ぽつり)笑うとかわいいんだよな…」
「「「エッ!?(おまえも?)」」」
「エッ!!(汗)」


 恋は 噂になっても秘めごと


 ガチャ。
「おかえり」
「…ぃま」
「今夜はやけに早いな。飯の支度はもう少しかかるぜ」
「―――いいよ別に」
「風呂は沸いてる。たまにはゆっくり浸かってこいよ」
 背中で言いながら台所に立つ同居の男を見つめて、

「……しろ」
「え?聞こえねえ」
 揚げ物の油の音がうるさくて顔だけ横を向いて聞き返した勇次だが、首のうしろに掛かった手にグイと引き寄せられた。
「いま何て…」

 顔を離すとあとも見ずに、すたすたとバスルームに向かうヒデ。
「おい…」
「休みとってやったぞ、明日」
「休み?」
「おめぇ―――誕生日だろうが」
「……。覚えてたのか」
「刑事なめんな。一度聞けば覚えるっ」


 愛されていることを本当に知っているのは 恋人だけ


「………」
(夕飯作りを続けるべきかバスルームに直行すべきか。菜箸を手に悩む極道主夫)


end.




● 非番の日 ●

 連日殺人級の猛暑。車のボンネットでホントに目玉焼きが作れそうです。
 暑いさなか、膝丈に破いた古いジーパンにビーサンのヒデが洗車するシーンが目に浮かびました。
 わざと派手に水を跳ね散らかしながら豪快に洗うので、頭から服まで全身水びたし。恋人から誕生日に贈られた細い金のネックレスが、 焼けた素肌にくっきり浮き出た喉元できらりと光を弾きます――――


 本日火曜日。痩せの大食いがいる家庭には欠かせない、業務用スーパーのポイント3倍デーでもあります。
 勇次が“カチコミ”と呼ぶ特売日の買い出しから意気揚々と凱旋して来ると、 水びたしのヒデが見知らぬ外国人の男と一緒にいるところに遭遇。
 両手いっぱいに大袋を下げたまま固まる勇次に気づいて、ヒデが男の肩越しに声を上げました。
「お!帰ってきた。―――な、だからジョークじゃないんだって。こいつ、俺の同居人」
「……」
 スッと近づくとヒデの隣に立ち、サングラスごしにじっと相手を見ている極道主夫(両手がふさがっているので手が出せない)。 2m近い赤ら顔のその男は急にそわそわして、最初は愛想笑いを浮かべていました。 が、同居人と紹介された男の無言の圧の凄まじさに徐々に顔色が青ざめてゆき、 そのうち暑さとは真逆の冷や汗がブワッと噴き出します。
 片言の日本語と英語でなにか口走ると、ヒデの方を見るのすら避けて逃げるようにその場を立ち去って行きました。
「…誰だ、いまの男?」
「さぁ?最近ここの近所に越して来たらしいぜ。散歩の途中で話しかけてきたんだ。 いくら言っても俺が1人暮らしだって思い込んでてさ。英会話教室がどうとか、ルームシェアがどうとか、いろいろ訊かれてたんだよ」
 一方なぜ急に去っていったのか分からず、ぽかんとしたまま無邪気に答えるヒデ。 濡れてくるくるになって纏いつく髪と、水で肌に張り付いたTシャツの布越しに透けているつつましやかなC首にちらと目を向けて、
「…おいヒデ。お前暑いからってその恰好(ナリ)で洗車するの…次から禁止な」
「は?なんでお前にそんなこと禁止されなきゃいけねぇんだよ?どんなかっこしようが俺の勝手―――」
 ムッとして即座に言い返すヒデですが、勇次の不穏な空気に気づいて思わず後ずさります。
「ちょ…、なんか恐ぇぞお前!?外でなんかあったのか?(先着お一人様2パックまでの卵が目の前で売り切れたとか)」
「何もねぇ(卵も買えたぜ)。お前こそ、さっきの白人になんかされてねぇだろうな」
「??なんかって?(怪訝)ちょっと立ち話しただけだぜ。けっこう馴れ馴れしいやつでさ、 トモダチになろうヨって会ってすぐハグされたけど―――」
 炎天下にもかかわらず絶対零度のひんやり感が、向かい合う男から伝わりました。
「さ、寒っ!―――な、、なんか勘違いしてないか、勇次……?」
「勘違いじゃねぇ。分かってねぇのはお前だ、ヒデ」

 あの外人が住所や職業など個人情報を、近日のうちに勇次によって突き止められてしまうことは必定。 ちょっと気の毒ではあるものの、以後この界隈で姿を見かけた日には、 200m以上離れた場所からでも最凶必殺のガン見で狙い撃ちされるに違いありません。
 ともあれ。
 刑事のくせして自分のことには無防備すぎると、洗車後にみっちりと説教&教育的指導されてしまう(ベッドで)、 非番の日の刑事さんでした……


end.




● タンデム ●

 駅周辺や交差点付近の古いビルの二階三階などで見かける、冴えない見た目の探偵事務所。 持ち込まれる依頼の約九割までが、浮気調査だそうで。
 もしも、刑事を辞めたヒデが元893とバディで探偵事務所を始めたら。



 浮気調査は勇次、それ以外の人探しなどはヒデと担当が割り当て。 そう決めたのは、一応届け出では代表になっているヒデです。

「なんでオレばっかりこんなに仕事押し付けられんだよ。九割ってのはさすがに酷くねぇか?!」
 ダークスーツにグラサン姿の元893、いまはヒデの同居人兼共同経営者兼恋人。 戻って来るなりネクタイを緩めつつ文句いう勇次を、デスクに長い両足乗っけて昼寝中のヒデが、 顔に伏せた週刊誌の隙間から薄眼を開けて眺めると、冷たく言い放ちました。
「だっておめぇの超得意分野だろ、そっち方面(つーん)」
 ほぼ一日中、足を棒にして動き回ってもまったく同情して貰えないのは、 夫の浮気調査を依頼しにやってきた外資系銀行マンの美人妻と仕事中に浮気したのが、先日バレたばかりだから。
「なんのために旦那のベンツにGPSつけさせたんだか(トゲ)」
 夫の動向を追跡するはずが、いつの間にかマダムが探偵と浮気中、 夫がどこにいるか確認するための目的に使用されてることを知ったヒデが激怒して、 勇次はここ一週間ベッドに入れてもらえません。
「だっ…だから何度も言ってるだろ、あくまでも調査だって。 あの女、だんなをダシにして裏で実はすげぇことやってるのがだんだん分かってきたんだよ!」←力説
 ただの浮気調査のはずが、きな臭い匂いを感じさせるものに行きつくときもあります。 元刑事のヒデはいまでも警察の同僚から、ときおり秘密裡に協力を依頼されたりするので、 勇次にしてみればこれでも体を張って?恋人のお仕事の役目に立っているつもりなのです、これでも。←力説
「……」
「もうしばらくの辛抱だって。ヒデ、お前だって後からオレに感謝するかもしれねぇぞ」
「へっ。とかなんとか言って、こないだの宝石商の女とはなんの事件とも関係ねぇのに寝たくせに」
 顔色ひとつ変えずクールに突っ込まれ、グラサンを室内でかけなおす元893。
 勇次の聞き込みで声をかけた女に口をきかせる手管は、百発百中の腕前。 依頼人からも時として聞きだすつもりもないことまで個人的に聞いてとせまられ、 高額追加料金を貰ってマダムの心と体の疼き―――もとい痛みに寄り添うというスペシャルオプションが、 これまた他のライバル探偵社にはない「H×U興信所」のお客様満足度200%の理由の一つでもあることは、 ヒデにも言われなくとも分かっています。
 開いてまだ一年そこそこの事務所の借り賃や二人分の生活費をねん出するのに仕方なく、 片目をつぶって見ないフリしているヒデでも、顧客のマダムのリッチな車がビルの真下に横づけされ、 ぬけぬけとそこから降りて来る相棒を窓から覗き見るときほど、 内心胸を掻き毟られることはありません(ぜったいそんな素振りは見せないけど)。

「ヒデ。こんなに言っても、オレを信じてくれねぇのか…?」
 上目遣いで無言のまま睨みつけている恋人に近づいて、ささやく勇次。 不機嫌でもその気の強さがかえって魅力的な黒目がちの瞳が揺らぎます。
「お前がいつまでも拗ねてキスひとつさせてくれねぇと、オレだってこれ以上頑張れねぇよ。なぁ」
 グラサンを外してゆっくりと屈み込み、ヒデが避けないことを確認してから濃密に唇を合わせました。

「―――それじゃおめぇの浮気調査っ、俺は誰に頼めばいいんだよっっっ!!!」

 勇次の体が離れると、真っ赤な顔していきなりわめいたヒデ。 サッとデスクから足を下ろすなり、警察行って来る!と後も見ずにジャケットひっつかんで飛び出して行きました。

ズッキュゥー−−−・・・ン

「……ヒデ……」

 残されたのは、だらしなく胸元を開けたシャツにネクタイを垂らしたままのホスト探偵(もどき)。



end.



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